吹き抜けリビングは、リビングの上に階(床)をつくらず、上下の空間をつなげた間取りです。天井が高くなり、広がりと、高い位置からの光が得られます。
その一方で、吹き抜けは、床がとぎれるため、耐震、空調、音の計画が大切です。この記事では、吹き抜けと勾配天井の違いや、法令上の扱いは別の記事に任せ、吹き抜けリビングを設計するときに考えることを、国土交通省の資料をもとに説明します。

吹き抜けリビングの形
吹き抜けには、次のような形があります。
| 形 | 特徴 |
|---|---|
| リビング全体を吹き抜けにする | 広がりが最も大きい。壁の面積が大きく、高い窓をつくれる |
| リビングの一部を吹き抜けにする | 広がりと、床面積の確保を両立しやすい |
| 階段室を吹き抜けにする | 階段まわりの空間が、上下につながる。トップライトとも組み合わせやすい |
| 細長い吹き抜け(スリット) | 床の面積を減らさず、光と視線だけ通す |
YYAが設計した箕面の家は、大きな階段室をもつ住宅です。階段室の上のトップライトから光が入り、階段の仕上げをシルバー塗装にして、1階にも明るさが届くように配慮しています。
耐震:吹き抜けを含む床全体で、確かめる
吹き抜けがあると、床が途切れる部分では、地震の力を、壁へ伝えにくくなります。木造で耐震等級2・3を確かめるときは、床倍率を確認します。
住宅性能評価・表示協会の技術基準の概要には、次のように書かれています(長期優良住宅 技術基準の概要)。
- 平均存在床倍率が、必要床倍率以上であることを確認する
- 耐力壁線の間隔が、大きすぎないことを確認する(図では、耐力壁線間距離は8m以下)
- 床区画内に吹き抜けがある場合、吹き抜けの部分に火打ち材がなくても、吹き抜けを含む床区画全体の面積で、存在床倍率を求める必要がある
つまり、吹き抜けは、床の面積から除いて計算するわけではなく、吹き抜けを含めた床全体で、必要な剛性があるかを確かめることになります。吹き抜けを大きくすると、床区画が大きくなり、基準を満たすために、床の仕様を強くする、耐力壁を増やすなどの対応が必要になる場合があります。
耐震等級の違いは、耐震等級の記事で説明しています。
空調:1階と2階の温度差を、どう減らすか
吹き抜けは、暖かい空気が上に、冷たい空気が下にたまりやすい、というイメージがあります。国土交通省の設計ガイドは、断熱性の高い家について、次のように説明しています(省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド)。
- 等級6・7の断熱性の高い家では、家全体の温度ムラが小さくなるため、吹き抜けや開放型の階段を設けて、リビングを中心に居室をつなげた間取りでも、少ないエネルギーで、家全体を暖冷房できる
- エアコンの置き方の例として、1階の壁掛けエアコンで、暖めた空気を吹き抜けや階段室を通して2階に送る方法、2階の壁掛けエアコンで、冷やした空気を1階に送る方法などが紹介されている
断熱性能が低いと、吹き抜けのある大きな空間は、暖房や冷房が効きにくくなります。断熱の等級と、UA値の基準は、高断熱・高気密の記事で説明しています。
光と通風:高窓と地窓を組み合わせる
吹き抜けの高い位置に、窓(高窓)を設けると、室内の奥まで光が届きます。国土交通省の設計ガイドでは、南面の大開口と吹き抜け、ハイサイドライトなどを組み合わせると、室内の奥まで日射を導入でき、冬の日射を活用しやすくなる、としています。
通風でも、吹き抜けは役に立ちます。設計ガイドは、断熱性の高い住宅は、春・秋の中間期に冷房の負荷が大きくなる傾向があるため、地窓と高窓を組み合わせて、上下の温度差を利用した通風・換気ができる窓を計画すると、室内にこもった熱を排熱できるとしています。さらに、吹き抜けを介して上下に窓を設けると、上下の差が大きくなり、通風・換気の効果が大きくなります。
高窓は、開け閉めの方法(電動、ポールで開けるなど)と、日射を遮る方法(庇、ブラインド)を、あわせて考えておきます。庇による日射の調整は、庇の記事で説明しています。
音・におい・掃除
吹き抜けは、空間がつながるため、生活音とにおいが、家全体に広がりやすいです。キッチンのにおいや、テレビの音が、2階の寝室に届きやすくなります。
照明の電球交換、窓の掃除も、高い位置では手間がかかります。吹き抜けの照明や窓は、手が届く位置にする、交換しやすい器具にする、足場をかけやすくするなど、計画の段階で決めておくと、あとで困りません。音、照明、掃除の考え方は、吹き抜けと勾配天井の記事で詳しく説明しています。
吹き抜けの計画で確認すること
- 吹き抜けを含めた床倍率は、基準を満たしているか
- 2階のホールや廊下が、吹き抜けに面する場合、手すりの高さと、落下の防止は十分か
- エアコンの位置と、暖冷房の空気の流れは、考えられているか
- 高窓の開閉と、日射を遮る方法は、決まっているか
- 照明の交換、窓の掃除は、できるか
- 2階の部屋の音とにおいは、気にならないか
- 断熱等級と、UA値は、十分か
ご相談の前に
吹き抜けは、家の形、構造、窓、空調と関わります。ご相談の際は、次の内容を教えてください。
- 吹き抜けにしたい場所と、広さのイメージ
- 土地の場所と、向き(日当たり)
- 希望の耐震等級と、断熱等級(決まっていなければ、相談の中で整理します)
- 暖房と冷房の使い方(全館、部屋ごとなど)
- 2階の部屋の使い方(寝室、子ども部屋など)
まとめ
吹き抜けリビングは、広がりと光が得られる一方、床が途切れるため、耐震、空調、音の計画が大切です。木造の耐震では、吹き抜けを含む床区画全体の面積で、床倍率を確認します。断熱性の高い家では、吹き抜けや階段室を通して空気を循環させ、少ない台数のエアコンで、家全体を暖冷房できます。高窓と地窓を組み合わせると、通風と排熱にも役立ちます。音やにおい、電球交換や掃除の手間も、計画の段階で考えておきましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
関連記事
下記のバナーからYYAの公式LINEを友だち追加していただくと、吹き抜けや大空間のあるリビングのご相談をLINEでお気軽にお寄せいただけます。

