長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使える家として、所管行政庁(都道府県や市など)が認定する制度です。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、2009年6月に始まりました。
認定を受けるには、耐震性・劣化対策・省エネルギー性・維持管理のしやすさ・住戸面積・維持保全の計画など、すべての基準を満たす必要があります(国土交通省・住宅性能評価・表示協会の資料)。

長期優良住宅の認定基準(一戸建て)
法律の第6条は、認定の基準として、住宅の構造・設備が長期使用構造等であること、住宅の規模が省令で定める規模以上であること、居住環境への配慮、自然災害への配慮、維持保全の方法と期間(30年以上)、資金計画などを定めています(長期優良住宅法 第6条)。
一戸建て(新築・木造軸組)の認定基準の概要は、次のとおりです(技術基準の概要)。
| 項目 | 基準の概要 |
|---|---|
| 劣化対策 | 劣化対策等級3相当+追加措置(床下・小屋裏の点検口、床下の有効高さ330mm以上など) |
| 耐震性 | 耐震等級(倒壊等防止)2以上(等級2または3) |
| 維持管理・更新の容易性 | 維持管理対策等級(専用配管)等級3相当 |
| 省エネルギー性 | 断熱等性能等級5かつ一次エネルギー消費量等級6相当 |
| 住戸面積 | 75㎡以上(少なくとも1つの階の床面積が40㎡以上) |
| 居住環境 | 地区計画、景観計画、建築協定などの区域内では、その内容と調和を図る |
| 災害配慮 | 災害のリスクのある地域では、所管行政庁が定めた措置を講じる |
| 維持保全計画 | 点検・補修などの計画を作り、維持保全の期間は30年以上、点検は10年以内ごと |
住戸面積と災害配慮は、地域の実情に応じて、所管行政庁が別の基準を定めている場合があります。申請する市町村の窓口で確かめます。
項目ごとのポイント
劣化対策
劣化対策等級3の基準に加えて、次の追加措置が求められます。
- 床下点検口と小屋裏点検口を、区分された空間ごとに設ける
- 床下の有効高さを330mm以上にする
木造では、外壁の軸組などに、通気構造と、材料・薬剤処理の組み合わせを採用します。点検口の位置は、家具の置き方まで考えて、設計の初期に決めます。
耐震性
耐震等級2または3の基準に適合することが求められます。耐震等級の違いと、等級3の考え方は、耐震等級の記事で説明しています。
維持管理・更新の容易性
構造躯体より、耐用年数が短い給排水の設備配管を、点検・清掃・補修・更新しやすい配置にします。たとえば、コンクリートに配管を埋め込まないことが、基準のポイントとして挙げられています。
省エネルギー性
断熱等性能等級5(6地域のUA値は0.60以下)と、一次エネルギー消費量等級6の両方が必要です。等級の数値は、高断熱・高気密の記事の表で説明しています。
維持保全:建てたあとが大切
長期優良住宅は、建てて終わりではありません。次の維持保全が求められます。
- 維持保全の期間は30年以上
- 点検の間隔は10年以内
- 地震や台風のあとに、臨時の点検を行う
- 点検の結果に応じて、調査・修繕・改良を行う
- 点検・修繕の記録を保存する
点検の対象は、構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分、給排水の設備です(長期優良住宅法 第2条第3項)。
認定を受けるメリット
認定を受けると、次のような優遇があります。内容や期限は、制度改正で変わるため、申請の時点で、最新の情報を確認してください(出典:技術基準の概要、2027年3月31日までに新築された住宅の場合)。
| 優遇 | 内容 |
|---|---|
| 登録免許税 | 保存登記の税率が、0.15%から0.1%に引き下げ |
| 不動産取得税 | 課税標準からの控除額が、1,200万円から1,300万円に増額(2031年3月31日までに新築された住宅) |
| 固定資産税 | 新築住宅の減額(1/2)の期間が、一戸建ては1〜3年から1〜5年に延長(2031年3月31日までに新築された住宅) |
| 地震保険料 | 耐震等級に応じた割引(等級2は30%、等級3は50%) |
| 住宅ローン | フラット35Sなどの金利の引き下げ |
住宅ローン減税などの所得税の優遇も、認定住宅では、借入限度額が上がります。入居の時期や世帯の条件で、内容が変わるため、税務署や金融機関で確かめましょう。
取るべきか:判断の考え方
長期優良住宅は、性能や税の面でメリットがある一方、手続きと費用がかかります。
| 内容 | |
|---|---|
| 向いている場合 | 長く住み続ける予定/耐震等級や断熱等級を、証明したい/税や、ローンの優遇を使いたい/将来の売却のときに、性能を示したい |
| 考えておくこと | 認定の申請に、書類の作成と審査の費用がかかる/維持保全の計画に沿った点検・記録が、継続して必要になる/75㎡以上などの基準があるため、小さな家では難しい場合がある |
認定の申請費用や、性能を上げる工事費は、家の仕様と、申請先の自治体や審査機関で大きく変わります。金額の目安は、設計の初期に、見積もりの中で確かめるのが確実です。
設計で考えること
長期優良住宅の認定を前提にするなら、設計の初期から、次を一緒に考えます。
- 点検口(床下・小屋裏)の位置と、家具の配置
- 床下の高さ(330mm以上)と、基礎の形
- 耐震等級2または3を満たす、壁の配置と、窓の大きさの兼ね合い
- 断熱等級5を満たす、窓の性能と、断熱材の仕様
- 配管の経路(点検しやすく、コンクリートに埋め込まない)
- 地区計画や景観計画など、地域のルール
ご相談の前に
長期優良住宅は、土地や予算と一緒に整理すると、計画が進めやすくなります。ご相談の際は、次の内容を教えてください。
- 土地の場所と、広さ(所管行政庁の基準の確認に必要です)
- 建てたい家の大きさ(延べ面積、階数)
- 認定を受けたい理由(税の優遇、ローン、性能の証明など)
- 希望する耐震等級と、断熱等級(決まっていなければ、相談の中で整理します)
まとめ
長期優良住宅は、長く良好に使える家として、所管行政庁が認定する制度です。一戸建ての新築の認定基準は、劣化対策等級3相当と追加措置、耐震等級2以上、維持管理対策等級(専用配管)3相当、断熱等性能等級5と一次エネルギー消費量等級6、75㎡以上(少なくとも1つの階に40㎡以上)、維持保全の計画(30年以上、点検は10年以内ごと)です。認定を受けると、登録免許税、不動産取得税、固定資産税、地震保険料、住宅ローンなどに優遇があります。ただし、申請の手続きと、建てたあとの点検・記録が必要です。長く住む予定で、性能を証明したい場合は、設計の初期から計画に入れましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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