高断熱・高気密の家とは、熱を逃がしにくい断熱と、すき間の少ない気密を組み合わせた家です。冬は暖かさが逃げにくく、夏は外の熱が入りにくいため、少ないエネルギーで、家の中の温度を保てます。
断熱の強さは、UA値(外皮平均熱貫流率)で表します。住宅性能表示制度の断熱等性能等級には、等級4から等級7があり、数字が大きいほど、断熱性能が高くなります(国土交通省 設計ガイド)。

断熱と気密の違い
| 何を防ぐか | 数値の指標 | |
|---|---|---|
| 断熱 | 壁・屋根・床・窓から、熱が出入りすること | UA値(小さいほど高性能) |
| 気密 | すき間から、空気が出入りすること | C値(小さいほど高性能) |
国土交通省の設計ガイドは、断熱性が高いほど、すき間からの漏れによる熱の損失を防ぐ気密が重要になり、断熱と気密はセットで考える必要があるとしています(設計ガイド)。
気密には、次の3つの目的があります。
- すき間からの空気の漏れによる、熱の損失を抑える
- 空気の通り道を明確にして、計画的に換気する
- 壁の中に、湿気が入るのを抑える
UA値とは
UA値(外皮平均熱貫流率)は、室内外の温度差1度のとき、建物の外側(外皮)全体から、どれだけ熱が逃げるかを、外皮の面積で割った数値です(換気による熱損失は含みません)。数値が小さいほど、熱が逃げにくい家です(国土交通省の資料)。
屋根・外壁・床・窓などの、外皮の性能をまとめた数値で、窓の大きさと性能も、UA値に影響します。
断熱等性能等級と、UA値の基準
住宅性能表示制度の断熱等性能等級は、2022年に、等級5・6・7が新しく設けられました。等級ごとのUA値の基準は、地域区分(1〜8地域)によって、異なります(寒い地域ほど、厳しい基準です)(国土交通省 設計ガイド)。
| 等級 | 位置づけ | 1・2地域 | 3地域 | 4地域 | 5地域 | 6地域 | 7地域 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 等級4 | 平成28年省エネ基準 | 0.46 | 0.56 | 0.75 | 0.87 | 0.87 | 0.87 |
| 等級5 | 誘導基準・ZEH基準 | 0.40 | 0.50 | 0.60 | 0.60 | 0.60 | 0.60 |
| 等級6 | ZEH+ハイグレード仕様 | 0.28 | 0.28 | 0.34 | 0.46 | 0.46 | 0.46 |
| 等級7 | 最高の等級 | 0.20 | 0.20 | 0.23 | 0.26 | 0.26 | 0.26 |
(単位:W/㎡・K。数字が小さいほど高性能。8地域は、UA値の基準が定められていません。)
地域区分は、東京は6地域、会津若松は4地域、水戸は5地域のように、市町村ごとに決まっています(国土交通省の資料)。自分の土地の地域区分は、国土交通省の告示の別表で確かめます。
等級4は最低ライン、等級5がZEH水準
2025年4月から、全ての新築住宅に、省エネ基準への適合が義務になりました(2025年4月以降に工事に着手するものが対象)(国土交通省のお知らせ、建築物省エネ法 第10条)。この省エネ基準は、断熱等性能等級の等級4にあたります。
つまり、等級4は、これから建てる家の、最低の水準です。等級5はZEH水準、等級6・7は、さらにその上の水準です。
等級6・7で、暮らしはどう変わるか
国土交通省の設計ガイドは、HEAT20(20年先を見据えた日本の高断熱住宅研究会)のシナリオをもとに、東京(6地域)で、暖房の時間を決めて使った場合の目安を、次のように示しています(設計ガイド)。
| 等級(6地域のUA値) | 暖房期の最低室温の目安 | 暖房エネルギーの削減(省エネ基準レベルとの比較、部分間欠暖房) |
|---|---|---|
| 等級4(0.87) | 概ね8℃を下回らない | ― |
| 等級6(0.46) | 概ね13℃を下回らない | 約55% |
| 等級7(0.26) | 概ね15℃を下回らない | 約75% |
数値は、所定の暖房の使い方と、特定の条件で出した目安です。実際の暖かさや光熱費は、家の形、窓、暖房の使い方、家族の暮らし方で変わります。
気密性能(C値)
C値(相当隙間面積)は、床面積1㎡あたり、どれくらいのすき間があるかを、面積(㎠)で示した数値です。小さいほど、気密性が高いことを表します。
国土交通省の設計ガイドには、次のとおり書かれています(設計ガイド)。
- 気密性能の基準は、定められていません
- 目安として、HEAT20は、断熱のレベルにかかわらず、C値0.7±0.2㎠/㎡を目指すとしている
- 気密性能は、計算では求められず、実際に測って(気密測定)確かめる
- 大切なのは、気密ラインや取り合い部、配管が貫通する部分を計画し、連続した気密の層をつくること
気密測定の方法の例は、JIS A 2201:2017として、設計ガイドの参考資料にも載っています。設計者や施工者に、測定をするかどうかを、事前に確認しましょう。
換気の考え方
気密性を高めると、計画した経路で、空気を入れ替えやすくなります。設計ガイドは、換気による熱の損失を少なくするため、断熱性の高い家には、熱交換型の第一種換気システムを選ぶことが望ましいとしています。
熱交換には、全熱交換型(湿気も交換)と顕熱交換型があります。設計ガイドは、全熱交換型は、夏に湿気を含んだ外気が、そのまま入ってくることがないため、高温多湿な地域に適していると考えられるとしています。
フィルターや給排気口が汚れると、換気の効率が落ちるため、定期的な掃除が必要です。
窓と日射の設計
高断熱の家では、窓の性能と、日射の調整が大切です。設計ガイドは、断熱性を上げるために、極端に窓を小さくすると、かえって暖冷房の負荷が増える場合があると指摘しています。
そのため、国土交通省の設計ガイドは、次の視点を挙げています。
- 季節・方位・時間に応じて、日射を調整できる設計(軒・庇、日射遮蔽部材、外構・植栽)
- 家中を快適にするための、暖冷房設備と換気設備
- 災害や停電への備え(レジリエンス)
窓の大きさや位置は、断熱だけでなく、日当たり、眺め、通風、プライバシーとのバランスで決まります。大きい窓と断熱性能を両立する考え方は、大きい窓の家は寒いのかを解説した記事で説明しています。軒や庇での日射の調整は、庇の記事をご覧ください。
計画の進め方
家の断熱性能は、設計の初期に、次の順で決めていきます。
- 土地の地域区分を確認する(UA値の基準が決まる)
- 目標の等級を決める(最低は等級4、ZEH水準は等級5)
- 窓の位置と大きさ、日射の取り入れ方を、プランと一緒に検討する
- 断熱材、窓、換気設備の仕様を決める
- UA値を計算する
- (希望する場合)気密測定を行う
ご相談の前に
断熱や気密のご要望は、土地や予算と一緒に整理すると、計画が進めやすくなります。ご相談の際は、次の内容を教えてください。
- 土地の場所(地域区分が分かります)
- 目標にしたい断熱等級(決まっていなければ、相談の中で整理します)
- 窓についての希望(大きな窓、眺め、日当たりなど)
- 暖房と冷房の使い方(全館、部屋ごとなど)
- 気密測定をしたいかどうか
まとめ
高断熱・高気密の家は、熱を逃がしにくい断熱と、すき間の少ない気密を組み合わせた家です。断熱の強さはUA値で表し、住宅性能表示制度の断熱等性能等級には4〜7があります。6地域(東京など)のUA値は、等級4が0.87、等級5が0.60、等級6が0.46、等級7が0.26です。2025年4月から、全ての新築住宅に、等級4にあたる省エネ基準への適合が義務になりました。気密性能(C値)の国の基準はなく、HEAT20は0.7±0.2㎠/㎡を目安としています。気密は、実際に測って確かめます。窓は、小さくしすぎると、かえって暖冷房の負荷が増える場合があるため、日射の調整と一緒に計画しましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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