住宅が建て込んだ市街地の街並み

防火地域・準防火地域とは?違いと規模ごとに必要な性能、窓・外壁の注意、土地の調べ方|建築家が解説

防火地域・準防火地域は、市街地で火事が起きたときに、まわりの建物へ燃え広がるのを防ぐために、都市計画で定める地域です。この地域では、建物の規模(階数と延べ面積)に応じて、燃えにくい構造にすることが求められます。

規模が小さい住宅なら、準防火地域でも木造で建てられます。たとえば地階を除く階数が2以下で、延べ面積が500㎡以下の木造住宅がそうです。ただし、隣の敷地や道路に近い部分(延焼のおそれのある部分)の外壁・軒裏・窓に条件がかかります。3階建てにする場合や、防火地域の場合は、求められる性能が上がります。

土地を買う前や間取りを考える前に、指定の有無と、建てたい規模でどの性能が必要かを確かめておくと、計画の見通しが立てやすくなります。

住宅が建て込んだ市街地の街並み

防火地域・準防火地域・22条区域の違い

火事に備えて建物に条件をつける地域には、大きく2つの種類があります。

区分定めるもの主な内容
防火地域・準防火地域都市計画建物の構造や、外壁の窓などに条件がかかる(建築基準法 第61条)
22条区域特定行政庁が指定する区域屋根に条件がかかる(建築基準法 第22条)

「特定行政庁(とくていぎょうせいちょう)」は、建築の確認や指導を行う役所のことです。市や県の建築指導の部署がこれにあたります。

22条区域は、防火地域・準防火地域の指定がない市街地でも指定されることがあります。防火地域・準防火地域のほうが、条件の範囲が広くなります。

建物の規模ごとに必要な性能

防火地域と準防火地域では、階数と延べ面積によって、建物に必要な性能が決まります(建築基準法施行令 第136条の2)。

ここで出てくる言葉は、次の意味です。

  • 耐火建築物:柱・壁・床などの主要な部分が、火事が終わるまで耐える性能をもつ建物
  • 準耐火建築物:耐火建築物より条件はゆるいが、一定の時間は火事に耐える建物
  • 防火構造:外壁や軒裏を、火が燃え移りにくくつくる構造
  • 防火設備:火や煙を一定の時間、屋内側へ通さない窓や戸(防火戸など)
地域建物の規模必要な性能令136条の2
防火地域階数3以上、または延べ面積100㎡超耐火建築物と同等の性能第1号
防火地域上記以外準耐火建築物と同等の性能第2号
準防火地域地階を除く階数4以上、または延べ面積1,500㎡超耐火建築物と同等の性能第1号
準防火地域地階を除く階数3、または延べ面積500㎡超1,500㎡以下準耐火建築物と同等の性能第2号
準防火地域地階を除く階数2以下、延べ面積500㎡以下の木造建築物など外壁と軒裏の延焼のおそれのある部分を防火構造の基準に合わせる。外壁の窓などの開口部には、加熱開始後20分間、屋内側に火炎を出さない防火設備を設ける第3号
準防火地域同じ規模の木造以外の建築物外壁の開口部に防火設備を設ける第4号

それぞれの号には、「延焼防止時間」という考え方で、同等以上の性能があるかを確かめる方法もあります。

住宅でいえば、準防火地域の2階建てなら、第3号の条件が基本になります。3階建てにすると、第2号の準耐火建築物と同等の性能が必要です。防火地域では、2階建てでも延べ面積が100㎡を超えると、耐火建築物と同等の性能が必要です。

延焼のおそれのある部分と、窓・外壁・軒裏・屋根

規模ごとの条件のなかで、設計に大きく関わるのが延焼のおそれのある部分です。これは、隣地境界線や道路の中心線などから、1階は3m以下、2階以上は5m以下の範囲のことです(建築基準法 第2条第6号)。隣の建物が火事になったとき、火が届きやすい範囲と考えるとわかりやすいです。

隣家との距離が近い住宅の外壁と窓

準防火地域で木造2階建てを建てる場合、この範囲にある部分に、次の条件がかかります。

部分条件
外壁防火構造の基準に合わせる
軒裏防火構造の基準に合わせる
窓などの開口部防火設備(加熱開始後20分間、屋内側に火炎を出さないもの)にする

窓は、防火設備にする必要があります。そのため、一般論として、選べるサッシやガラス、窓の大きさに制約が出ることがあります。費用にも影響することがあるので、早い段階で設計者に伝えてください。

配置計画で、範囲を減らす工夫

延焼のおそれのある部分は、敷地の境界線からの距離で決まります。そこで、設計では次のような工夫を考えます。

  • 大きな窓を、延焼のおそれのある部分の外に置く(隣地から離れた位置、中庭側など)
  • 建物を隣地境界線から離して配置し、範囲にかかる外壁を減らす
  • 隣地に近い面は窓を小さくまとめ、開放的にしたい面は道路や庭の側へ向ける

窓の位置は、光や風、眺めにも関わります。防火の条件だけで決めずに、採光や通風と合わせて考えます。

軒裏と屋根

軒裏の材料や張り替えの注意は、破風・鼻隠し・軒天の記事で説明しています。屋根は、防火地域・準防火地域のどちらでも、建築基準法 第62条で条件が決まっています。屋根の形の選び方は屋根の形の記事をご覧ください。

建ぺい率の緩和

防火地域・準防火地域では、建物の性能を上げると、建ぺい率(敷地に対する建築面積の割合)の限度に1/10(10%)を加えられることがあります(建築基準法 第53条第3項第1号)。

地域緩和を受けられる建物
防火地域耐火建築物など(建ぺい率の限度が8/10の地域を除く)
準防火地域耐火建築物など、準耐火建築物など

角地などで使える別の緩和と重なる場合は、合わせて2/10を加えられます。

たとえば、建ぺい率の限度が6/10の準防火地域で、準耐火建築物にすれば、7/10まで建てられる場合があります。そのぶん建物の性能を上げる必要があるので、緩和で広げられる面積と、性能を上げる手間のバランスを見て判断します。

敷地が地域にまたがる場合

1つの敷地が、防火地域や準防火地域と、指定のない区域にまたがることがあります。この場合、建物がまたがっていると、建物全体に厳しいほうの規定がかかります(建築基準法 第65条)。ただし、防火壁で区画した場合は、区画した部分ごとの扱いになります。

防火地域と準防火地域にまたがる場合は、防火地域の規定がかかります。敷地の境に指定の線が通っている土地は、購入前に、どちらの規定がかかるか確かめておきましょう。

隣地境界線に接する外壁

防火地域・準防火地域で、外壁が耐火構造(火事に耐える構造)であれば、その外壁を隣地境界線に接して設けられます(建築基準法 第63条)。敷地を広く使いたい場合の選択肢になります。

自分の土地の指定を調べる方法

土地が防火地域・準防火地域かどうかは、次の方法で調べられます。

  • 自治体の都市計画図・都市計画情報:用途地域と並んで、防火地域・準防火地域が示されています。吹田市は、防火地域・準防火地域を、用途地域と並ぶ地域地区として定め、建物の構造を制限しています(吹田市の資料)
  • 重要事項説明書:不動産会社から受け取る書類に、指定の有無が書かれています
  • 建築指導の窓口:市役所などの窓口で、指定や、必要な性能を教えてもらえます

地域の指定は、都市計画の変更で変わることがあります。購入や設計の前に、最新の情報を窓口で確認してください。

リフォームで気をつけること

リフォームでも、窓の交換、外壁の張り替え、増築などで、防火の性能を満たす製品や仕様が必要になることがあります。たとえば、延焼のおそれのある部分の窓を、防火設備でないものに替えることはできない場合があります。

見た目や断熱のために窓や外壁を替えるときは、先に地域の指定と、工事をする部分が延焼のおそれのある部分にあたるかを確認します。建てたときの規定と今の規定が合わない建物(既存不適格)の考え方は、再建築不可・既存不適格の記事で説明しています。

ご相談の前に

防火の条件は、土地の場所、建てたい規模、隣地との距離で変わります。ご相談の際は、土地の場所(住所または地番)、用途地域と防火の指定(分かれば)、建てたい階数と延べ面積、窓や外観のご希望を教えてください。測量図や、重要事項説明書の写しがあれば、お持ちください。

まとめ

防火地域・準防火地域は、市街地の火事の広がりを防ぐための地域です。建物の規模に応じて、耐火建築物や準耐火建築物と同等の性能が必要になります。準防火地域でも、地階を除く階数が2以下で延べ面積500㎡以下の木造住宅なら、木造で建てられます。その場合は、延焼のおそれのある部分の外壁・軒裏・窓に条件があります。窓の位置を隣地から離すなど、配置計画で条件の影響を減らす工夫もできます。土地の指定は、都市計画図や重要事項説明書、建築指導の窓口で調べられます。

この記事の監修

吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。

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