切妻・寄棟・片流れなど、形の違う屋根の家が並ぶ住宅地

屋根の形の種類|切妻・寄棟・片流れ・入母屋の違いと、雨漏り・法規・太陽光から選ぶ方法|建築家が解説

住宅の屋根の形には、切妻(きりづま)、寄棟(よせむね)、片流れ(かたながれ)、入母屋(いりもや)、陸屋根(ろくやね)などがあります。屋根の形は外観の印象を決めるだけでなく、雨漏りのしやすさ、建てられる高さ、太陽光発電の載せやすさ、室内の天井の形にも関わります。

どの形が一番よいということはありません。敷地の高さの制限(北側斜線など)、雨や雪の多さ、太陽光を載せたいか、室内で天井を高くしたい場所があるかを整理すると、合う屋根の形が絞られます。

切妻・寄棟・片流れなど、形の違う屋根の家が並ぶ住宅地

屋根の形の種類と特徴

屋根の形どんな形かよいところ気をつけること
切妻(きりづま)棟から両側に流れる、本を伏せたような形。両端に三角形の壁(妻)ができる形が単純で雨仕舞いがしやすい。屋根裏の空間をとりやすい妻側の外壁は雨や日差しを受けやすいので、軒の出(けらば)を考える
寄棟(よせむね)棟から四方に流れる形。前後は台形、両端は三角形の屋根面になる四方に軒が出るので外壁を守りやすい。落ち着いた外観棟や隅の部分が多く、切妻より取り合いが増える。屋根面ごとの面積が小さく、太陽光を載せにくいことがある
片流れ(かたながれ)一方向にだけ流れる形高い側に高窓を設けやすい。屋根面が大きく、向きが合えば太陽光を載せやすい雨が一方に集まるので、雨どいと、高い側の壁と屋根の取り合いに注意
入母屋(いりもや)上部が切妻、下部が寄棟の組み合わせ格式のある和風の外観形が複雑で、取り合いや部材が増える
陸屋根(ろくやね)ほぼ水平の屋根屋上を使える。四角い外観勾配が小さいぶん、防水と排水の計画・点検が大切

(屋根の形の定義:JAANUS「kirizuma-zukuri」、「yosemune-zukuri」、「irimoya-zukuri」、「katanagare」)

入母屋や寄棟は、和風の家でよく見られる形です。和風の外観については和風建築の記事でも説明しています。

雨漏りしやすいのは「形」より「取り合い」

雨漏りは、屋根の面の真ん中より、棟・谷・壁との取り合い・天窓などの開口部といった、部材と部材がぶつかる場所で起こりやすくなります。

  • 谷:2つの屋根面がぶつかって水が集まる部分。屋根の形が複雑になるほど増えます
  • 壁との取り合い:片流れの高い側や、下屋(1階の屋根)が2階の壁にぶつかる部分
  • 軒の出が少ない:外壁や窓まわりに雨がかかりやすくなります

単純な形の屋根ほど、こうした取り合いが少なくなります。屋根の端の部材(破風・鼻隠し・軒天)については破風・鼻隠し・軒天の記事、屋根に窓を付ける場合は天窓の記事で説明しています。

なお、新築住宅の場合、売主・請負人は、引き渡しから10年間、屋根などの雨水の浸入を防止する部分の瑕疵について責任を負います(住宅の品質確保の促進等に関する法律 第94条・第95条、同法施行令 第5条)。

高さの制限と屋根の形

建物の高さには、建築基準法の道路斜線・隣地斜線・北側斜線などの制限があります(建築基準法 第56条)。たとえば第一種・第二種低層住居専用地域などでは、北側の隣地境界線(または道路の反対側の境界線)までの真北方向の距離に1.25を掛け、5mを足した高さが上限になります(第一種・第二種中高層住居専用地域では10mを足す。日影規制の条例で指定された区域などを除く)。

この制限は斜めの線になるので、屋根を北側に向かって下げると、制限の中で室内の高さを確保しやすくなります。片流れや、北側だけを低くした屋根がよく使われるのはこのためです。

YYAが設計した箕面の家(大阪府箕面市、2024年竣工)でも、北側斜線に配慮して、北側に向かって下がる片流れ屋根にしています。

箕面の家の外観

斜線の制限は、用途地域、道路の幅、敷地の向きで変わります。屋根の形を決める前に、敷地の条件を確かめることが大切です。

太陽光発電と屋根の形

太陽光パネルは、日射を受けやすい向きの、大きく単純な屋根面に載せやすくなります。

屋根の形太陽光の載せやすさ
片流れ屋根面が一つで大きい。南向きなどに向けられれば載せやすい
切妻2面のうち、日射を受けやすい面に載せる
寄棟屋根面が4つに分かれ、1面ごとが小さくなりやすい
陸屋根架台で角度を付けて載せる。防水との取り合いに注意

ただし、片流れでも、屋根の向きが北向きだと発電量は少なくなります。高さの制限で屋根の向きが決まることもあるので、制限と発電の両方から考えます。

屋根の形で室内の天井も変わる

屋根の形は、室内の天井にも関わります。屋根の傾きをそのまま天井に見せる勾配天井にすると、天井が高くなり、部屋に広がりが出ます。片流れの屋根なら、高い側に窓を設けて光を取り込むこともできます。

平屋の場合は屋根が外観の大部分を占めるので、屋根の形がそのまま家の印象になります。平屋の外観の記事もあわせてご覧ください。

屋根の形の選び方

YYAでは、屋根の形は敷地の環境によって決まるものと考えています。先に「この形にしたい」と決めるのではなく、高さの制限、方角、周りの建物、雨や日差しの受け方から、その敷地に合う形を選びます。下の表は、そのときの手がかりです。

重視したいこと考えやすい形
雨漏りのリスクを減らしたい切妻・片流れなど、取り合いの少ない単純な形
北側斜線の中で室内の高さを確保したい北側に下がる片流れ、北側だけを低くした形
太陽光をたくさん載せたい日射を受けやすい向きの片流れ・切妻
外壁を雨から守りたい軒を四方に出せる寄棟、軒を深く出した切妻
和風の落ち着いた外観にしたい入母屋・寄棟
屋上を使いたい陸屋根(防水と点検の計画が前提)

ご相談の前に

屋根の形は、敷地の高さの制限、方角、周りの建物、室内でつくりたい空間から決まります。ご相談の際は、敷地の場所(用途地域が分かれば)、方角、太陽光を載せたいか、好きな外観の写真、天井を高くしたい部屋があるかを教えてください。

まとめ

屋根の形には、切妻・寄棟・片流れ・入母屋・陸屋根などがあります。雨漏りは屋根の形そのものより、棟・谷・壁との取り合いで起こりやすく、単純な形ほど取り合いは少なくなります。北側斜線などの高さの制限、太陽光発電、室内の天井の形とも関わるので、外観の好みだけでなく、敷地の条件と暮らし方から選びましょう。

この記事の監修

吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。

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