ピロティとは、建物の1階部分を柱だけで支え、壁のない開放的な空間にしたものです。2階から上の部屋の下に、屋根のかかった屋外の空間ができます。
住宅では、狭い敷地で駐車場や玄関まわりの空間をとるためによく使われます。一方で、ピロティは地震のときに1階に力が集中しやすい形でもあります。ピロティのある家を計画するときは、使い方だけでなく、床面積の扱いと構造の安全性を一緒に考えることが大切です。

ピロティのメリット
- 敷地を有効に使える:建物の下を駐車場や駐輪場、物置場として使えるので、狭い敷地でも車を停めるスペースと部屋の広さを両立しやすくなります
- 雨にぬれにくい:車の乗り降りや、荷物の出し入れ、子どもの自転車置き場が屋根の下になります
- 2階以上を道路から離せる:生活の中心を2階にすると、通りからの視線が気になりにくくなります
- 風が抜ける・見通しがよい:壁がないので、敷地の奥まで見通しや風が通ります
YYAが設計した箕面の家(大阪府箕面市、2024年竣工)では、道路側の1階をピロティにしています。ひな壇の土地での建て替えで、生活の中心のLDKは2階に置いています(2階リビングの記事、傾斜地・ひな壇の土地の記事)。

ピロティのデメリット・気をつけること
| 気をつけること | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| 地震への備え | 1階の壁が少なく、揺れの力が1階の柱に集中しやすい | 構造の検討で、ピロティ階が先に壊れないようにする(下で説明) |
| ピロティの上の部屋が寒い | 床の下が外気にさらされる | 床の断熱をしっかり行う。配管の凍結にも注意 |
| 防犯 | 外から入りやすく、暗くなりやすい | 照明やセンサーライトを付ける。玄関や窓の位置を見通しのよい場所にする |
| 排気ガス・音 | 車の排気や音が上の部屋に伝わる | 換気と、床の遮音・気密を計画する |
| 費用 | 柱や梁を大きくしたり、構造の検討が増えたりする | 計画の早い段階で構造の考え方を決める |
床面積・容積率の扱い
ピロティが床面積に入るかどうかは、十分に外気に開放されているかと、屋内的な用途に使うかで判断されます。国の通知(昭和61年 建設省住指発第115号「床面積の算定方法について」)では、ピロティは「十分に外気に開放され、かつ、屋内的用途に供しない部分」であれば床面積に算入しないとされています(千葉市消防局の資料)。
| ピロティの使い方 | 床面積 | 理由 |
|---|---|---|
| 道路や空地と一体で、人や車が常に通れる通路のような空間 | 算入しない | 十分に外気に開放され、屋内的用途に使わない |
| 駐車場(車庫)・自転車置場 | 算入する | 車や物を格納する屋内的用途にあたる |
| 一部だけを物置などにする | その部分だけ算入する | 屋内的用途の部分のみ |
住宅のピロティを駐車場に使うと、多くの場合は床面積に入ります。ただし、容積率の計算では、自動車車庫などの部分は、敷地内の建物の各階の床面積の合計の5分の1までは延べ面積に算入しないという緩和があります(建築基準法施行令 第2条第1項第4号・第3項)。
また、ピロティの部分は、外壁やそれに代わる柱の中心線で囲まれるので、建築面積(建ぺい率)には入ります(建築基準法施行令 第2条第1項第2号)。
床面積の扱いは、開放の程度や使い方の細かい条件で判断が分かれることがあり、自治体や確認検査機関ごとに運用が異なる場合もあります。計画の段階で確認しておきましょう。
地震で気をつけること
ピロティのある建物は、1階に壁が少なく、2階から上に壁が多いため、揺れによる変形が1階に集中しやすい形です。建築研究所の報告では、平成7年の兵庫県南部地震でピロティ構造の建物の部分崩壊による大きな被害があり、その後、ピロティ階が層崩壊しないようにする設計の考え方が示されたとしています。平成28年の熊本地震では、1981年以降に設計された鉄筋コンクリート造の建物で倒壊・崩壊は確認されなかった一方、ピロティ構造の1階の柱が損傷して「大破」と判定された例が報告されています(建築研究所「平成28年熊本地震による鉄筋コンクリート造等建築物被害」)。
住宅でピロティをつくるときは、次の点を設計の段階で確かめます。
- ピロティにする構造の形式が、無理なく成り立つか(YYAが最初に確かめる点です)
- 1階の柱や壁の量と配置が、上の階とのつり合いを欠いていないか
- 車の出し入れのために壁をなくす範囲を、必要な分に絞れないか
- 構造の計算や検討で、ピロティ階の安全性を確かめているか
中古住宅でピロティのある建物を検討する場合は、建てられた時期(1981年以前か以降か)と、耐震診断や耐震改修の有無を確認してください。古い家の改修については築50年・築40年の家の記事でも説明しています。
ピロティ以外の方法と比べる
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| ピロティ(建物の下に駐車) | 敷地を有効に使えるが、構造と断熱の検討が必要 |
| ビルトインガレージ(壁とシャッターで囲う) | 防犯・雨風に強い。床面積に入り、容積率の緩和は同じく受けられる |
| カーポート(建物と別の屋根) | 建物の構造に影響しない。敷地に余裕が必要。建ぺい率などの扱いは計画の段階で確認する |
| 屋根なしの駐車場 | 費用は少ないが、雨の日の乗り降りがぬれる |
店舗やオフィスでは、ピロティを入口前の待ち合わせや、通りとつながる空間として使うこともあります。店舗の外観の考え方は店舗ファサードの記事で説明しています。
ご相談の前に
ピロティは、敷地の広さ、車の台数と大きさ、建物の構造をあわせて考える必要があります。ご相談の際は、敷地の広さと形、前面道路の幅、停めたい車の台数と大きさ、2階を生活の中心にしたいかどうかを教えてください。
まとめ
ピロティは、建物の1階を柱で支えて開放した空間で、狭い敷地で駐車場や玄関まわりをつくるのに役立ちます。駐車場に使う場合は床面積に入ることが多いものの、容積率には車庫の緩和があります。地震のときに1階に変形が集中しやすい形なので、構造の検討を前提に計画し、上の部屋の断熱や防犯にも気を配りましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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