店舗のファサードとは、通りから見える店の正面のことです。外壁、入口、ガラス面、看板、照明までを含みます。
ファサードは、通りを歩く人や車からお店を見つけてもらう最初の接点です。デザインを考える前に、次の4つを決めておくと、方向がぶれません。
- 何の店か伝わるか:通りすがりの数秒で、業種や雰囲気がわかるか
- 入りやすいか:中の様子がどこまで見えるか。入口の位置と開き方
- 夜にどう見えるか:照明で、閉店後や夕方以降にどう見えるか
- 通りからどう見えるか:前面道路や歩道の広さ、車や人の流れ、隣の建物との関係
テナントの場合は、ビルの規約と屋外広告物の許可で、変えられる範囲が決まります。物件を選ぶ段階から、ファサードを意識しておくことが大切です。

ファサードを決める順番
- 通りからの見え方を確かめる:どこから、どの距離で見られるか。歩く人、車、向かいの歩道
- 中をどこまで見せるかを決める:ガラス面の大きさ、カーテンやブラインドの有無
- 入口の位置と開き方を決める:段差、扉の種類、入りやすさ
- 看板と照明を決める:店名をどこに、どの大きさで、夜はどう照らすか
- 素材と色を決める:建物の外装や周りとの関係
素材や色から考え始めると、「見た目はよいが、何の店かわからない」「中が見えず入りにくい」ファサードになりがちです。
ガラス面と中の見せ方
入口やガラス面から店内が見えると、初めての人でも中の雰囲気がわかり、入りやすくなります。一方、美容室の施術スペースやクリニックの待合など、見られたくない場所もあります。
- 見せたい場所(ギャラリー、受付、商品、カウンター)を通りに面して置く
- 見せたくない場所は、奥に置く、床の高さや壁で区切る、すりガラスやカーテンを使う
- ガラス面を大きくしたときは、夏の日差しや、夜に中から外が見えにくくなる点も考える
夜の見え方と照明
夕方以降は、ファサードの印象が大きく変わります。ガラス越しに店内の照明が見えると、店そのものが通りの明かりになります。看板だけを照らすより、店内の明るさと、入口まわりの照明を合わせて計画すると、夜の通りでも目に入りやすくなります。
看板と屋外広告物の許可
看板は、多くの自治体で屋外広告物条例による許可の対象になります。大阪市の場合、自分の店の店名や商標を表示する看板(自家用広告物)は、1つの看板の表示面積が7㎡を超えると許可の申請が必要です。自家用でない広告は、大きさにかかわらず申請が必要です(大阪市 屋外広告物申請Q&A)。
道路の上に突き出す看板(突出看板)は、屋外広告物の許可とは別に、道路占用の手続きが必要になる場合があります(大阪市 屋外広告物・道路占用の申請)。
基準は自治体ごとに違います。大阪市以外の物件では、その自治体の条例を確かめましょう。また、景観の条例で色や大きさが決められている地区もあります。
テナントで変えられる範囲
ビルのテナントでは、ファサードを自由に変えられるとは限りません。契約の前に、次の点を確かめます。
- ビルの規約:外壁の色や素材、ガラス面の扱い、看板の位置と大きさ
- 共用部分との境目:入口の外側(共用廊下、ピロティなど)に手を加えられるか
- 工事の区分:ファサードの工事を自分の業者でできるか、ビル側の業者になるか
- 原状回復:退去のときに、どこまで元に戻す必要があるか
物件選びの段階で見ること
ファサードの良し悪しは、デザインより前に、物件の正面がどんな場所に面しているかで大きく決まります。
- 前面道路や歩道の広さ。通りの向かい側から店の正面が見えるか
- 車や人の流れ。信号待ちや交差点など、人が立ち止まる場所が近くにあるか
- 正面の幅。看板やガラス面をどのくらい取れるか
- 建物の外装。店のファサードとどう組み合わせるか
実例:美容室・ギャラリー「Lula」(大阪府吹田市)
YYAが設計したLulaは、マンションの1階にある路面店を、スケルトンから美容室とギャラリーに改修した店舗です。2023年にGerman Design Awardの優秀賞を受賞しました。
- 物件選びから参加:物件の契約前から内見に同行しました。前面道路が広く見通しがよく、交差点で信号待ちをする車からも店の正面が見えること、敷地内の歩道と市の歩道が広く、正面にゆとりのある空間があることが、物件を選ぶ決め手になりました
- 入口を全面ガラスに:気軽に入りやすい雰囲気にし、内装の色や素材が外ににじみ出るようにしました
- サロンを一段上げる:ギャラリーからサロンを一段上げて空間を分けました。外から見るとサロンが一段高いステージのように見え、夜は照明で浮かび上がり、通りを行く人へのアピールになります
- 建物の外装との関係:マンションの外装のタイルに対して、床に特注のレンガタイルを使い、建物と連続しながらも異なる表情をつくっています

ご相談の前に用意するとよいもの
- 物件の住所と、正面の写真(昼と夜があれば)
- 業種と、店内で見せたいもの・見せたくないもの
- ビルの規約や工事区分表(テナントの場合)
- 看板の希望(位置、大きさ、夜の照明)
YYAでは、物件の内見に同行しています。大阪の物件は無料、大阪以外は交通費のみ実費をいただき、内見自体は無料です。
まとめ
店舗のファサードは、「何の店か伝わるか」「入りやすいか」「夜にどう見えるか」「通りからどう見えるか」で決めます。テナントではビルの規約と屋外広告物の許可で変えられる範囲が決まり、正面がどんな通りに面しているかは物件を選ぶ段階でしか選べません。物件を決める前から、ファサードを意識して計画しましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。片岡重男建築研究所、株式会社日建設計を経て、2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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