店舗併用住宅とは、住まいと、店舗・事務所・教室・クリニックなどを、一つの建物にした住宅です。通勤がなく、家族との時間をとりやすいのが魅力です。
一方で、用途地域によって、建てられる店の種類や広さが決まっています。たとえば第一種低層住居専用地域では、店などの部分は50㎡以下で、延べ面積の1/2以上を住まいにする必要があります。そのうえで、住まいと店の入口・動線・音を分けること、将来の使い方を考えておくことが大切です。

店舗併用住宅とは
店舗併用住宅は、住まいに、店舗・事務所・教室・クリニックなどを組み合わせた建物です。美容院、パン屋、学習塾、アトリエ、歯科医院など、さまざまな使い方があります。
建築基準法では、第一種低層住居専用地域で建てられるものとして、住宅で事務所・店舗などを兼ねるもの(いわゆる兼用住宅)の条件を定めています。次の章で、地域ごとの条件を説明します。
店舗併用住宅のメリット・デメリット
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 通勤の時間がなくなる |
| メリット | 家族と近い場所で仕事ができる |
| メリット | 土地を一つで使える |
| デメリット | 住まいと仕事の気持ちの切り替えが難しい |
| デメリット | 音・におい・視線が、住まいと店のあいだで気になる |
| デメリット | 来客の駐車・駐輪の場所が必要になる |
| デメリット | 店をやめたあとの使い道を考える必要がある |
デメリットの多くは、設計で和らげられます。次の「設計で考えること」で説明します。
用途地域で建てられる店が変わる
どんな店を建てられるかは、土地の用途地域で決まります。ここでは、低層住宅の地域の条件を、条文にそって説明します。
| 用途地域 | 条件 | 根拠 |
|---|---|---|
| 第一種低層住居専用地域 | 兼用住宅は、延べ面積の1/2以上を住まいにし、店などの部分は50㎡以下 | 建築基準法施行令 第130条の3 |
| 第一種低層住居専用地域 | 診療所(クリニック・歯科医院)も建てられる | 建築基準法 別表第2(い)項第8号 |
| 第二種低層住居専用地域 | 上の兼用住宅に加え、政令で定める店舗・飲食店などで、その部分の床面積の合計が150㎡以内のもの(3階以上の部分をその用途にするものを除く) | 建築基準法 別表第2(ろ)項第2号 |
第一種低層住居専用地域の兼用住宅で認められる用途は、次のとおりです(施行令第130条の3)。
- 事務所
- 日用品の販売を主とする店舗、食堂、喫茶店
- 理髪店、美容院、クリーニング取次店などのサービス業の店舗
- 洋服店、畳屋、建具屋などのサービス業の店舗
- 自家販売のためのパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋など
- 学習塾、華道教室、囲碁教室など
- 美術品や工芸品のアトリエ、工房(一部は、原動機の出力に条件があります)
それ以外の用途地域では、条件が変わります。業種ごとに違うので、計画の前に、市役所などの建築指導の窓口で確認してください。
設計で考えること
| 考えること | 設計の考え方 |
|---|---|
| 入口・動線 | お客様の入口と、家族の玄関を分ける。店のスタッフと家族の動線も、できるだけ交わらないようにする |
| 音・におい・視線 | 店の音やにおいが、住まいに届かない配置にする。例えば、店の真上に寝室を置かない。お客様から住まいの中が見えないように、窓の向きを考える |
| 来客の駐車・駐輪 | 店の営業に必要な台数を、先に決める。入口までの道のりも考える |
| トイレ・給排水・電気 | 店で使う設備の量に合わせて、容量や位置を計画する |
| 看板 | 自治体の屋外広告物の条例を確認する(基準は自治体ごとに違います) |
| 防犯 | 営業時間外に、店と住まいのあいだを行き来できないようにする。鍵や仕切りの位置を考える |
店舗併用住宅は、住まいと店の境目をどこに引くかで、使いやすさが大きく変わります。店の種類と広さの条件は、前の章の建築基準法施行令 第130条の3にそって確認します。土地を選ぶ段階から、建物の配置と入口の向きを一緒に考えるのがおすすめです。
将来の使い方も考えておく
店は、いつかやめるときが来るかもしれません。そのときのために、次のような使い方を考えておくと安心です。
- 店だった部分を、住まいに戻す
- 店だった部分を、貸す
- 店だった部分を、別の用途に使う
店の部分の入口や設備を分けておくと、どの使い方にも対応しやすくなります。用途を変えるときの手続きは、用途変更の記事で説明しています。
実例:森の歯科(歯科医院併用住宅)
YYAが設計した森の歯科は、和歌山県田辺市に建つ、歯科医院併用住宅の新築です。2022年5月末に竣工しました。敷地は323.96㎡、延床面積は180.10㎡です。
治療室は、完全個室にして、森へ向けて配置しています。外観には紀州産材の木ルーバーを使い、紀州産の青石も取り入れました。YYAは、土地選びの段階から関わっています。

歯科医院の設計は、歯科医院の設計の記事でも説明しています。
ご相談の前に
店舗併用住宅は、土地の用途地域と、開きたい店の内容で、建てられるかどうかが決まります。ご相談の際は、次の内容を教えてください。
- 土地の場所と、用途地域(分かれば)
- 開きたい店の業種と、広さ
- 営業時間
- 家族構成
- 来客の駐車の台数
まとめ
店舗併用住宅は、住まいと店を一つの建物にした住宅です。通勤がなく、家族と近い場所で仕事ができます。第一種低層住居専用地域では、延べ面積の1/2以上を住まいにし、店などの部分は50㎡以下にします。診療所は、この地域でも建てられます。第二種低層住居専用地域では、店舗・飲食店などを150㎡以内で建てられる場合があります。設計では、入口・動線、音・におい・視線、駐車を考え、将来の使い方も考えておきましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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