陸屋根(ろくやね、「りくやね」とも読みます)は、勾配がほとんどない、平らな屋根です。屋根の上を、屋上テラスや太陽光パネルの置き場として使えるため、箱のようなシンプルな外観の住宅で選ばれます。
その一方で、水が流れにくいため、防水の仕上げと、排水の計画が重要です。木造住宅の陸屋根・バルコニーの防水には、排水勾配1/50以上、防水層の立ち上がりは開口部の下端で120mm以上・その他で250mm以上などの基準があります(まもりすまい保険 設計施工基準 第8条)。

陸屋根とは
陸屋根は、切妻や片流れのような、はっきりした傾きのない屋根です。完全な水平ではなく、雨水を排水ドレン(排水口)に集めるため、わずかな勾配をつけます。
屋根の形の種類は、屋根の形の記事で説明しています。
メリットとデメリット
| 内容 | |
|---|---|
| メリット | 屋根の上を、屋上テラスなどに使える |
| メリット | 箱のようなシンプルな外観にできる |
| メリット | 太陽光パネルなどの設備を置く場所にできる |
| デメリット | 水が流れにくく、防水が劣化すると雨漏りにつながる |
| デメリット | 排水ドレンに、落ち葉やゴミがたまると、水があふれる |
| デメリット | 防水層の点検と、定期的なメンテナンスが必要 |
木造住宅の陸屋根の防水の基準
木造住宅の陸屋根とバルコニーの防水には、住宅の瑕疵(かし)を保証する保険の基準である、まもりすまい保険の設計施工基準があります。建築基準法そのものではありませんが、保険に加入する新築住宅の、実務上の基準になっています。
次の表は、まもりすまい保険 設計施工基準の、第8条(バルコニー等・陸屋根の防水)の内容です。
| 項目 | 基準 |
|---|---|
| 排水勾配 | 防水下地面の勾配は1/50以上。ただし、防水材製造者の施工基準に基づく場合は、この限りではない(例として、勾配を1/100以上としている製造者もあります) |
| 防水工法 | 次のいずれか:金属板(鋼板)葺き/塩化ビニル樹脂系シート防水/アスファルト防水/改質アスファルトシート防水/FRP系塗膜防水(ガラスマット補強材を2層以上)/FRP系塗膜防水と、改質アスファルトシート防水またはウレタン塗膜防水を組み合わせた工法 |
| 立ち上がり | 壁との取り合い部の防水層は、開口部の下端で120mm以上、それ以外で250mm以上立ち上げ、防水テープやシーリングで、適切に止水する |
| 排水ドレン | 排水溝は勾配を確保し、ドレンの取り付け部は防水層を補強し、取り合いを止水する |
| 手すり壁・パラペット | 防水紙を壁の下端から張り上げ、上端は金属製の笠木を設置するなど、防水の措置を講じる |
| 笠木の固定 | 釘やねじが防水層を貫通する部分は、防水テープやシーリングなどで止水する |
| 太陽光パネル | 設備の製造者の施工基準に基づいて、防水の措置を講じる |
下地の剛性
同じ基準の解説では、下地の合板のたわみや反りで、防水層が破断し、雨漏りにつながる事故が多いと指摘されています。そのため、構造用合板などのボード類を2枚千鳥張りにするか、厚さ24mm以上の構造用合板にして、床の剛性を高めることが重要とされています。
ドレンの数と大きさ
排水ドレンの径と数は、建てる場所の降水量の記録と、屋根・バルコニーの面積に応じて、適切にします。陸屋根の面積に制限はありませんが、ドレンが詰まったときのために、水があふれたときの逃げ道(オーバーフロー)も設計で考えておきます。
鉄筋コンクリート造の場合
鉄筋コンクリート造などの陸屋根は、同じ設計施工基準の別の章で、次のように定められています。
- 防水下地は、鉄筋コンクリートなど、ひび割れや変形が出にくいものにする
- 防水工法は、日本建築学会の「JASS 8 防水工事」、または同等以上の防水性能を有する面防水とする
- パラペットの上端は、金属製の笠木を設置するか、防水材料を施工するなど、雨水の浸入を防ぐ措置をとる
- 防水下地面の勾配は、1/50以上とする(防水材製造者の基準による場合を除く)
屋上を使うときの手すり
屋上テラスやバルコニーとして使うときは、建築基準法施行令で、屋上広場や2階以上の階のバルコニーの周囲に、高さ1.1m以上の手すり壁・さく・金網を設けることが決まっています(建築基準法施行令 第126条第1項)。
屋上に出る階段室やドアの位置も、手すりの高さと一緒に計画します。
屋根の形の選び方
陸屋根は、屋上を使いたいときや、外観を箱のようにまとめたいときに向いています。一方、雨漏りのリスクを小さくしたいときや、メンテナンスの手間を減らしたいときは、傾斜のある屋根のほうが、水が流れて、安心な場合があります。
YYAの設計では、屋根の形は、敷地の環境と、使い方から決めます。たとえば、YYAが設計した箕面の家は、北側斜線の制限を受ける部分を、勾配に配慮した形にし、南側に開く片流れの屋根としました。
ご相談の前に
屋根の形は、外観と、メンテナンスの手間に関わります。ご相談の際は、次の内容を教えてください。
- 屋上テラスや太陽光パネルを使いたいか
- 敷地の用途地域と、北側斜線などの高さの制限(分かれば)
- 希望する外観(箱のような形、傾斜のある形など)
- 建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造など)
- 今の屋根の困りごと(雨漏り、排水など)
まとめ
陸屋根は、勾配のほとんどない平らな屋根です。屋上を使える一方で、防水と排水の計画が重要です。木造住宅の陸屋根・バルコニーは、まもりすまい保険の設計施工基準で、排水勾配1/50以上、防水層の立ち上がり120mm・250mm以上、笠木の止水などが定められています。屋上テラスにするときは、高さ1.1m以上の手すりが必要です。屋根の形は、敷地の環境と、使い方、メンテナンスの手間から決めましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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