箕面の家

実家を建て替える前に決めること|名義・住み方・段取り・住み継ぐ設計を建築家が解説

実家の建て替えでは、更地に家を新築する場合と比べて、既存の家の解体や、家財の整理、今の住まいからの退去なども考える必要があります。家は、親が住んできた家であり、これから自分たち、またはその次の世代が住む家でもあるからです。

この記事では、実家を建て替えるときに、整理しておく順番と、設計者に伝えるとよいことをまとめます。名義・税金・ローンは、設計事務所が結論を言える分野ではないので、確認する窓口を案内します。最後に、YYAが設計した、住み継ぐための建て替え「箕面の家」の考え方を紹介します。

箕面の家の外観。ひな壇の敷地に建つ住宅

最初に整理する3つのこと

実家の建て替えでは、次の3つを、設計の相談の前に整理しておくと、進めやすくなります。

  1. 誰の家にするか(土地・建物の所有者と、費用の出し方)
  2. どう住むか(今の住み方と、将来、誰が住むか)
  3. どう進めるか(解体・仮住まい・工事中の暮らし)

最初から、すべてを決めておく必要はありません。家族の希望と、まだ決まっていないことを書き出して設計者に相談すると、設計者による計画・費用の検討と、専門家への確認を並行して進め、必要な時点で確定できます。

また、解体を決める前に、敷地の条件や法規上の制約を確認し、建て替えができるかどうか、希望する大きさや配置が実現できるかを、設計者と検討します。今の家があることと、希望どおりの家が建てられることは、同じではないからです。

名義と費用の出し方は、専門家に確認する

まず、土地と、今の建物の所有者、共有者がいるか、今のローンや担保の状況を整理します。そのうえで、新しい建物の所有者と持分、費用の負担を決めます。誰が費用を出し、建物を誰の名義にするかで、税金(贈与税・相続税など)や住宅ローンの扱いが変わることがあります。

ただ、これは設計事務所の専門外です。YYAでは、結論を言わずに、次の窓口へ確認することをすすめます。

  • 名義・登記: 司法書士
  • 税金(贈与税・相続税など): 税理士
  • 住宅ローン: 金融機関(親の家を担保にするかどうかを含めて)

制度は改正されることがあります。最新の内容を、専門家に確認してください。 決まった内容(誰が住み、誰の名義にするか)を設計者に伝えてもらえれば、計画に反映できます。

総予算は、建築工事費だけでなく、次の項目を含めて整理します。金額は、条件によって変わります。YYAでも、費用は条件で変わるため、個別に確認が必要です。

  • 設計・調査の費用
  • 解体の費用
  • 仮住まい、引っ越し、家財の保管の費用
  • 登記・融資などの諸費用
  • 敷地の条件による追加工事と、予備費

どう住むかを考える

住み方は、今の住み方と、将来、誰が住むかの2つに分けて考えます。

考えること設計で関わること
今の住み方(親子で設備を共有する/玄関・水回り・LDKの一部または全部を分ける)生活時間の違い、音、水回りやキッチンの数
将来の住み手(親が住んだあとに、子が住み継ぐ、など)住み手が変わっても使える部屋数・収納の考え方

どれが正解かは、家族の事情と、土地の条件で決まります。親世代と子世代で希望が違うこともあります。設計の打ち合わせでは、どちらか一方の意見だけを聞くのではなく、双方に確認しながら進めることが大切です。

建て替えか、リノベーションか

実家を建て替えるのか、残してリノベーションするのかは、土地・建物・暮らし・費用の順に確かめて判断します。判断の手順は、リノベと建て替え、どちらを選ぶ?で説明しています。建て替えると決めた場合は、このあとの段取りへ進みます。

解体と仮住まいの段取り

建て替えでは、今の建物を解体してから、新しい建物を建てます。そのため、更地に新築する場合にはない段取りが入ります。

  • 仮住まい: 工事中に住む場所が必要かどうかを、早めに決めます。別に住まいがあれば、仮住まいは要りません。ない場合は、仮住まいの場所・期間・家財の置き場所を、計画に入れます。仮住まいの期間は、今の家を退去する日から、新しい家に入居できる日までで考えます。家財の搬出、解体、建築工事、引き渡し、引っ越しの日程を合わせて確認します
  • 解体: 解体の前に必要な調査と、その結果による対応を、解体業者に確認します。見積もりでは、調査・撤去・処分の範囲と、追加の費用がかかる条件を確認してください
  • 家財・思い出の品: 解体の前に、残すものを決めておきます

仮住まいの費用や期間は、住まいの場所や工事の内容で変わるので、この記事では数字を出しません。

設計者に最初に伝えること

実家の建て替えでは、YYAは、昔そこで生活していたことから、何に不満があるかを聞くことから始めます。たとえば、次のようなことです。

  • 今の家で、使いにくかったところ(家の中を移動する経路=動線、収納、寒さ・暑さ、段差)
  • 逆に、残したいもの(庭の木、ドアや引き戸などの建具、場所の記憶)
  • これから、誰が、どのように暮らすか

これを伝えてもらえるほど、新しい家の設計に反映できます。

事例:住み継ぐための建て替え「箕面の家」

YYAが設計した箕面の家は、大阪府箕面市の、段状に造成された敷地(ひな壇)での、戸建て住宅の建て替えです。施主は、生前の間に建て替えたいという方でした。

この建て替えは、娘さん夫婦に家を残すためのものでした。そのため、設計では、部屋数や収納など、住み手が変わっても対応できるように配慮しました。具体的には、次のようにしています。

  • 各部屋にロフトを造り、モノが増えても対応できるようにしました
  • 部屋は、夫婦二人の暮らしなら2つで足りるところ、3つ造りました。娘さん家族の人数に合わせた部屋数です

打ち合わせは、基本的に施主(親)と進めました。そのうえで、現場では、仕上げの素材について、娘さんにも確認してもらい、施主と娘さんの双方の承諾を得るようにしました。

箕面の家の外観。道路側から見た建物

この家の設計の考え方は、傾斜地に家を建てるときの注意点や、2階リビングのメリット・デメリットでも触れています。

まとめ

  • 実家の建て替えは、設計の相談の前に「誰の家にするか」「どう住むか」「どう進めるか」を整理します
  • 名義・税金・ローンは、設計事務所の専門外です。司法書士・税理士・金融機関に、最新の内容を確認してください
  • 解体の前に、建て替えができるかどうかを、設計者と確認します
  • 設計者には、今の家の不満と、残したいもの、これから誰がどう暮らすかを伝えます
  • 住み継ぐ家は、部屋数や収納を、住み手が変わっても対応できるように考えます
  • 親世代と子世代の希望が違うときは、双方に確認しながら進めます

この記事の監修

吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。

関連記事

下記のバナーからYYAの公式LINEを友だち追加していただくと、実家の建て替えについてのご相談をLINEでお気軽にお寄せいただけます。

YYA公式LINEで友だち追加

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA