中古マンションをリノベーション前提で内見するときは、内装の見た目よりも、「壊せない壁」と「動かせない設備」を先に見ることをおすすめします。具体的には、構造図の耐震壁の位置と、PS(パイプスペース)の位置です。この2つが分かると、その住戸で希望の間取りにできるかどうかの見当がつきます。
ただし、内見の場で分かることには限りがあります。図面や管理規約は、内見の前に取り寄せておくと、現地で見るべき場所がはっきりします。この記事では、内見の前・内見中・内見のあとに分けて、設計者の視点でチェックリストにまとめます。

内見の前に取り寄せておくもの
内見では、現地を見ながら図面と照らし合わせるのが近道です。不動産会社に、次の資料を出してもらえるか確認しておきましょう。
| 資料 | 見る理由 |
|---|---|
| 間取り図・竣工図(あれば) | 部屋の寸法、PSや柱・梁の位置を確かめる |
| 構造図(あれば) | 耐震壁の位置を確かめる。間取りをどこまで変えられるかが分かる |
| 管理規約・使用細則 | 工事の申請、床の遮音など、リノベーションの制限を確かめる |
| 築年が分かる資料 | 1981年(昭和56年)6月1日より前の旧耐震基準かどうかを確かめる |
構造図が出てこない物件もあります。その場合は、現地で壁を叩いて確かめる方法があります。乾いた音がする壁は石膏ボードなどのボード壁、音が違う壁はRC(鉄筋コンクリート)の壁の可能性が高く、判断の手がかりになります。確実に分かるのは、解体して中を見たときです。構造図がない場合は、間取り図だけで決めずに、リノベーションの設計者に相談してください。
築年については、新耐震基準は1981(昭和56)年6月1日に導入されました(仙台市「マンションの耐震化」)。旧耐震基準の建物は、耐震診断や耐震改修を行っているかどうかも確認しておきます。
管理規約については、国土交通省の「マンション標準管理規約」で専有部分の修繕に承認が必要とされています(マンション標準管理規約(単棟型)令和7年改正)。実際の制限は、各マンションの管理規約で決まります。詳しくはマンションリノベーションでできること・できないことで説明しています。
内見の持ち物
設計者として内見に持っていくのは、レーザー(距離計)とメジャーです。
- レーザー距離計: 部屋の縦横や天井高を、一人でもすばやく測れます
- メジャー: 窓の幅や高さ、扉の寸法、PSまわりなど、細かい寸法を測れます
- スマートフォン: 図面と照らし合わせる場所や、気になった箇所を撮影しておきます(撮影は、不動産会社や居住者に確認してから行います)
測った寸法は、あとで設計者に見せるときに役立ちます。
最初に見る:耐震壁とPSの位置
内見で最初に確かめるのは、構造図の耐震壁の位置と、PS(パイプスペース)の位置です。
耐震壁の位置
耐震壁は、地震の力に抵抗する壁で、撤去したり、大きな穴を開けたりすることはできません。耐震壁が間取りの真ん中にあれば、壁を取り払って広いLDKにする、といった間取りは難しくなります。
あわせて、マンションの構造の種類も確かめます。
- ラーメン構造: 柱と梁で建物を支える構造。間仕切りの壁は、構造と関係のないものが多く、間取りの自由度が高い
- 壁式構造: 壁で建物を支える構造。撤去できない壁が多く、間取りの自由度は低くなりやすい
YYAでは、壁式構造のマンションで、間仕切りの自由度が少ない間取りの場合は、リノベーションに向かないことがあると考えています。ただし、間取りによっては影響が少ないものもあります。壁式構造だからといって、すぐにあきらめる必要はありません。希望する間取りと、耐震壁の位置を照らし合わせて判断します。
PS(パイプスペース)の位置
PSは、排水や給水の縦の配管が通るスペースです。水まわり(キッチン・浴室・トイレ・洗面)を動かせるかどうかは、このPSの位置と、床下の高さが大きく関わります。
内見では、PSがどこにあるか、水まわりとの位置関係はどうかを見ます。水まわりをPSから離したい場合は、床下の高さや配管の勾配の検討が必要になるため、設計者に相談してください。
変えられない部分を確かめる
窓・玄関扉・バルコニーは、標準管理規約では共用部分とされ、原則として自分の判断では変えられません。内見では、次の点を見ておきます。
- 窓: 位置と大きさ。「ここに窓があれば」という希望があっても、窓の位置は変えられない
- 玄関扉: 位置と、玄関まわりの広さ
- バルコニー: 広さと、出入りする窓の位置
- 天井の高さ: レーザーやメジャーで測る。梁や柱の出っ張りも、あわせて見る
「変えられない部分」を先に把握しておくと、「買ってから思っていた暮らしができない」という事態を避けやすくなります。
共用部分と管理の状態を見る
専有部分だけでなく、建物全体も見ておきます。エントランス、廊下、ゴミ置き場、掲示板などの手入れの状態は、管理の様子を知る手がかりです。
長期修繕計画や修繕積立金は、リノベーション費用とは別に、将来の負担として考えておく必要があります。
内見のあとにやること
内見のあとは、次のものを整理して、リノベーションの設計者に見せると、話が早く進みます。
- 取り寄せた間取り図・構造図・管理規約
- 内見で測った寸法と、撮影した写真
- 実現したい暮らしや、やりたい間取り
購入を決める前に、その物件で希望のリノベーションができるかを、設計者に確認してもらうと安心です。
YYAでは、内見への同行にも対応しています。大阪の物件は無料、大阪以外は交通費のみ実費でお受けしています。
ご相談の前に
内見の前後にご相談いただく場合は、物件の資料(間取り図、構造図・竣工図があれば、管理規約・使用細則)、築年と構造、実現したい暮らし、今の住まいで困っていることを教えてください。
まとめ
中古マンションをリノベーション前提で内見するときは、まず構造図の耐震壁とPSの位置を確かめます。壁式構造で間仕切りの自由度が少ない間取りでは、希望の間取りが難しいことがあります。窓・玄関扉・バルコニーは変えられないので、位置と寸法を測っておきましょう。内見の前に図面と管理規約を取り寄せ、内見のあとは測った寸法や写真と一緒に設計者に見せると、購入前に「できるか、できないか」を判断できます。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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