リノベーションと建て替えのどちらがよいかは、築年数だけでは決まりません。先に確かめたいのは、次の順番です。
- 土地:今と同じ大きさで建て替えられるか
- 建物:構造と基礎が、これからも使える状態か
- 暮らしと性能:何を変えたいか、何を残したいか
- 費用と期間:同じ条件にそろえて比べる
建て替えると今より小さくなる土地や、構造が健全で残したいものがある家は、リノベーションが向きやすくなります。反対に、地盤や基礎、構造の傷みが大きい家や、間取りと性能を根本から変えたい場合は、建て替えが向きやすくなります。また2025年4月からは、大がかりなリノベーションにも建築確認が必要になり、以前より手続きや費用の差が小さくなる場合があります。
この記事では、建て替えとリノベーションの両方を設計してきた設計事務所の立場から、判断の手順を解説します。

①土地:今と同じ大きさで建て替えられるか
最初に確かめるのは建物ではなく、土地です。今の家が建った後に法律や道路の扱いが変わっていると、建て替えると今より小さな家しか建てられない、場合によっては建て替えができないことがあります。この場合、選べるのは実質的にリノベーションになります。
| 確かめること | 何が起きるか |
|---|---|
| 接道 | 建物の敷地は、原則として幅4m以上の道路に2m以上接している必要があります(国土交通省)。満たさない土地は、原則として建て替えができません |
| 前の道の幅(2項道路) | 幅4m未満の道で「2項道路」に指定されている場合、建て替えでは道路の中心線から2mまで敷地を後退(セットバック)する必要があります(建築基準法第42条第2項、国土交通省)。後退した部分には建てられないため、敷地が実質的に狭くなります |
| 建ぺい率・容積率・高さの制限 | 今の基準で計算し直すと、今の家より床面積や高さが小さくなることがあります |
| 今の家の書類 | 確認済証・検査済証、図面があるか。ない場合は調べる手間が増えます |
確かめ方:住所(地番)を持って、市区町村の建築指導の窓口で、前の道が建築基準法上の道路か、2項道路かを確認します。設計事務所に相談すれば、これらを調べたうえで「建て替えた場合に建てられる大きさの目安」を出せます。
②建物:構造と基礎の状態
次に、今の建物を残して使えるかを調べます。
- 基礎:大きなひび割れ、沈下がないか
- 土台・柱:シロアリや雨漏りで傷んでいないか
- 耐震性:建てられた時期と、壁の量・配置、柱と梁の接合部
耐震の基準は、1981年6月(新耐震基準)と、木造住宅では2000年に大きく見直されています。1981年6月〜2000年5月に建てられた新耐震基準の木造住宅でも、熊本地震で倒壊した例があり、国土交通省はリフォームなどの機会に接合部等を確認することを勧めています(国土交通省)。
構造の傷みが部分的なら、補強してリノベーションできます。地盤や基礎全体に問題がある場合は、直す費用がかさみ、建て替えのほうが合理的になることがあります。目で見えない部分は、インスペクション(建物状況調査)や耐震診断で確かめてから判断しましょう。
③暮らしと性能:何を変えたいか、何を残したいか
| 変えたいこと | リノベーション | 建て替え |
|---|---|---|
| 間取り | 構造を残す範囲で変えられる。壁を抜くには補強が必要なことがある | 自由に決められる(土地の制限の範囲で) |
| 部屋の階の配置(例: LDKを2階に) | 床の強さや階段の位置で制約が大きい | 自由に決められる |
| 断熱・気密 | 開けた壁・床・天井から改善できる。窓の交換も効果が大きい | 2025年4月からは、すべての新築で省エネ基準への適合が義務(国土交通省) |
| 耐震 | 補強で向上できる。目標とする水準は診断で決める | 現行の基準で建てる |
| 残したいもの(柱、建具、外観、思い出のある部屋) | 残せる | 一部の部材を再利用することはできるが、建物は新しくなる |
残したいものがはっきりしている家は、リノベーションの価値が大きくなります。反対に、「家の向きや階の構成から変えたい」という要望は、リノベーションでは実現が難しく、建て替えが向いています。
2025年4月から、大がかりなリノベにも確認申請
2025年4月以降に着工する工事から、木造2階建てなどの住宅で、壁・柱・床・はり・屋根・階段のいずれかを半分を超えて改修する「大規模なリフォーム」には、建築確認が必要になりました(国土交通省)。例えば、階段の架け替えや屋根の全面的な改修が該当します。
- 対象にならない例:屋根や壁の仕上げ材だけの改修、キッチン・浴室・トイレなど水回りのリフォーム、手すりやスロープの設置
- 木造の平屋で延べ面積200㎡以下の住宅は対象外
- 確認申請では、今の法律に合っていない部分があれば、合わせる工事が別に必要になる場合があります
骨組みだけを残す全面的なリノベーションは、この「大規模なリフォーム」に当たることが多くなります。申請の手間と期間、現行の基準に合わせる工事を見込むと、以前より建て替えとの差が小さくなるケースがあります。該当するかどうかは工事の内容で変わるため、設計の早い段階で確かめます。
費用・期間の比べ方
業者ごとに示す金額が違うのは、比べている範囲が違うからです。同じ項目をそろえて比べることが大切です。
| 項目 | リノベーション | 建て替え |
|---|---|---|
| 工事費 | 改修する範囲で大きく変わる | 新築の工事費 |
| 解体費 | 内部の解体のみのことが多い | 建物全体の解体 |
| 設計料・申請費 | 大規模なリフォームでは確認申請の費用もかかる | 確認申請・検査の費用 |
| 調査費 | インスペクション、耐震診断 | 地盤調査 |
| 仮住まい・引っ越し | 工事の範囲による(住みながら工事できる場合も) | 必要 |
| 税金 | 一定の省エネ改修・耐震改修では所得税の控除がある(国税庁 省エネ改修・耐震改修) | 登記の費用。新築住宅は条件を満たせば固定資産税が一定期間減額(神戸市の例) |
| 補助金 | 自治体の耐震改修の補助など(下記) | 年度ごとに国や自治体の制度を確認 |
参考になる数字として、住宅金融支援機構の2024年度フラット35利用者調査では、注文住宅(土地を買わずに建てる場合)の住宅面積の平均は118.5㎡、所要資金の平均は3,936万円でした(住宅金融支援機構)。全国のフラット35利用者の平均で、解体費や仮住まいの費用は含みません。リノベーションは、民間の調査で戸建てのフルリノベーションが500万〜2,000万円程度、構造の補強まで含めると1,200万〜2,500万円以上とされています(CREX)。
ただし、この2つは条件がそろっていないため、そのまま比べられません。実際には、自分の家で両方の案の範囲をそろえて見積もることで、初めて比べられます。リノベーションの予算ごとの工事範囲は戸建てフルリノベーションの費用の記事で解説しています。
大阪市内で2000年5月31日以前に建てられた住宅は、耐震改修の補助の対象になる場合があります(工事費の1/2、1戸115万円まで、条件あり)(大阪市)。
実例:建て替えた家と、リノベーションした家
建て替え:箕面の家(大阪府箕面市)

箕面の家は、ひな壇に造成された住宅地での建て替えです(2024年竣工、延床115.92㎡)。施主は、元気なうちに建て替えて、将来は娘さんご夫婦に住み継いでもらうことを考えて、建て替えを選ばれました。次の世代まで長く使う家にしたいという目的が、決め手になった例です。
前の家では1階にリビングがあり、前の道の人通りが気になって、日が入るのにブラインドを閉めて暮らしていたそうです。
建て替えでは、LDKを2階に移し、1階の天井を高くしてロフトの収納を設けることで、2階の床を周囲より高い位置にしました。南側の木製サッシを開け放つと、テラスと一体になり、街並みを望めます。部屋をどの階に置くかから考え直すことは、建て替えだからこそできた変更です。
リノベーション:西神中央の家(神戸市西区)

西神中央の家は、1993年に建てられたツーバイフォーの住宅のリノベーションです(2023年竣工、延床119.53㎡)。施主が子どもの頃から過ごした実家で、ご依頼は「小部屋の多い間取りを大きなワンルームにしたい」「外まわりより内部を改修してほしい」というものでした。施主は、建て替えは費用がかかると考えておられ、最初からリノベーションでのご相談でした。
構造を計算したうえで新しい柱と梁を加え、1階を大きなLDKにしました。亡くなったお父様が選んだという薄いグリーンの外壁を残し(写真の面は既存のまま)、その色につながる緑がかった石を内装に使っています。家族の記憶が残る建物を生かせることは、リノベーションならではの価値です。詳しくは築30年のツーバイフォーのリノベの記事をご覧ください。

どちらが向くか
ここまでの内容を、判断の目安としてまとめます。これは設計者としての一般的な見解で、実際には土地と建物を調べて判断します。
| こんな場合 | 向きやすい選択 |
|---|---|
| 建て替えると小さくなる、または建て替えができない土地 | リノベーション |
| 構造が健全で、残したい部分や思い出がある | リノベーション |
| 予算を抑えて、工事を段階に分けたい(今回は内部、次は外装など) | リノベーション |
| 地盤・基礎・構造の傷みが大きい | 建て替え |
| 部屋の階や向きなど、家の構成から変えたい | 建て替え |
| 長く住む予定で、性能を新築の水準にそろえたい | 建て替え(リノベーションでも高めることはできるが、費用との比較が必要) |
相談の前に用意するとよいもの
- 住所(地番がわかると、道路や法規を調べやすい)
- 建てた年、図面、確認済証・検査済証、構造計算書(あれば)
- 今の家で困っていること、変えたいこと
- 残したいもの(部屋、建具、外観など)
- これから住む予定の年数と、おおよその予算
これらがあれば、相談の段階で「建て替えた場合に建てられる大きさの目安」と「リノベーションで残せる部分・直すべき部分」を整理できます。ご相談は無料です。
まとめ
リノベーションか建て替えかは、①土地、②建物、③暮らしと性能、④費用と期間の順に確かめると判断しやすくなります。特に、建て替えた場合に今と同じ大きさで建てられるかは、最初に確認しておきたい点です。2025年4月からは大がかりなリノベーションにも確認申請が必要になったため、両方の案を同じ条件で比べることがより大切になっています。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。片岡重男建築研究所、株式会社日建設計を経て、2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
関連記事
- 築30年のツーバイフォーでも大きなLDKはつくれる?実家を住み継ぐリノベ実例
- 戸建てフルリノベーションの費用と予算別の実現範囲
- 【後悔しない家づくり】住宅設計事務所を選ぶべき理由とハウスメーカー・工務店との徹底比較
下記のバナーからYYAの公式LINEを友だち追加していただくと、リノベーションか建て替えかのご相談をLINEでお気軽にお寄せいただけます。

