モルタルは、セメントに砂と水を混ぜたものです。コンクリートは、そこに砂利を加えたものです。住宅では、モルタルを「どこに、何のために」使うかで、向き不向きが変わります。
とくに外壁は、モルタルだけで考えず、下地・防水紙・通気層まで含めた構成で判断します。また、土間や床では、ひび割れが入ることを前提に、仕上げを選ぶ必要があります。この記事では、材料の違いから、外壁と土間での使い分け、設計者や施工会社に確認することまで、順に説明します。

セメント・モルタル・コンクリートの違い
3つの違いは、混ぜる材料です。セメント協会は、次のように説明しています。
| 名前 | 材料 | 主な使い方 |
|---|---|---|
| セメント | 灰色の細かい粉末。水を加えると固まる | 他の材料の原料 |
| モルタル | セメント+水+砂 | 壁や床の仕上げ、レンガやタイルを接着するつなぎ |
| コンクリート | セメント+水+砂+砂利 | 建物、橋、ダムなどの構造 |
セメントは、水と化学反応して固まります。乾いて固まるのではないので、水の量や養生(固まるまでの湿り気の管理)が出来を左右します。
砂利が入らないぶん、モルタルは表面をなめらかに仕上げやすく、仕上げ材や下地、接着のために使われます。現場では、モルタルとコンクリートが、あまり区別されずに呼ばれることもあります。打ち合わせでは、「どこに、どの仕上げで使うのか」を確かめてください。
住宅でモルタルを使う場所
住宅でのモルタルの使い方は、大きく3つに分けられます。
- 表面に見せる仕上げ: 外壁、土間、床、内壁の表面
- 下地: 塗装、吹き付け、タイルなどを施す前の、平らな面をつくる
- 接着・目地: レンガやタイルを留めるつなぎ、目地を埋める
どの場合も、ひび割れと水の扱いが判断の軸になります。以下、外壁と土間・床に分けて説明します。
外壁のモルタル
外壁は、モルタルだけではできていない
ここでは、木の下地を用いるモルタル外壁について、国土交通省の国土技術政策総合研究所(国総研)の資料をもとに説明します。
モルタル外壁は、木の下地に防水紙を張り、金網(ラス)をステープル(コの字形の接合具)で留め、その外側にモルタルを塗ったものです。国総研の資料の「二層下地通気構法」の例では、屋外側から室内側へ、次の順に重なります。
- モルタル
- ラス(金網)
- 防水紙(アスファルトフェルト)
- ラス下地板
- 通気層
- 透湿防水シート(防水紙の一種)
- 合板などの下地、柱

見えているモルタルの裏に、二種類の防水紙と通気層があり、雨水の侵入を防ぎ、壁の中の湿気を逃がす考え方です。国総研の資料では、この通気層のある構法(通気構法)を推奨しています。
通気層のない直張り構法は、雨水が入ったときに水が滞留しやすく、下地が傷みやすくなります。とくに気密性の高い現代の住宅では推奨されない、と同じ資料に書かれています。
ひび割れは「必ず入る」と考える
YYAでは、モルタルのひび割れは必ず入ると、施主にお伝えしています。入らない前提では考えず、入ったあとに状態を確認し、補修が要るかを判断していきます。
国総研の資料は、小さなひび割れについては、次の条件つきで説明しています。モルタルの裏に防水紙があり、通気構法であれば、小さなひび割れだけで柱や梁まで雨水が届くことは、ほとんどありません。また、地震でラスが切れない限り、小さなひび割れは外壁の強度にほとんど影響しない、とされています。一方で、防水紙やラスが切れるほどの大きなひび割れや、通気層のない構法では、下地が傷む心配があります。
ひび割れが「小さい」かどうかは、幅だけでなく、位置や進み方、防水紙などの状態で変わります。入ったひび割れを放置してよいかは、設計者や施工会社に見てもらって判断してください。
ひび割れを減らす方法として、同じ資料は、外壁のコーナーや窓の四隅の補強(ラスやガラス繊維ネット)と、ひび割れに追従しやすい塗り材を挙げています。
材料と施工は、事前に確認する
国総研の資料は、「どんな材料を使うか」で、耐久性や、地震のときの剥がれやすさが変わると注意しています。工事の前に、元請けの会社に、次のことを確認することを勧めています。次の表は、木の下地を用いる通気構法の例での、資料の記載です。実際に採用する壁の構成に応じた仕様は、設計者・施工会社に確認してください。
| 確認すること | 国総研の資料での記載 |
|---|---|
| 構法 | 通気構法を推奨。直張り構法(通気層なし)は推奨されない |
| 防水紙 | モルタルの裏は、最低でもアスファルトフェルト430(モルタル裏の標準的な防水紙)。巻き単位の重さで区別される包装用の8kg品・17kg品は、建築用ではないため外壁には使わない |
| ラス | 波形ラスなど、モルタルに覆われる立体的な形。平らなラスは一般部では使わない |
| ステープル | ラスに対応した太さ・長さのものが必要。波形ラスの例では、長さ19mmが推奨されている |
| 記録 | 使った材料と施工の写真を残す「モルタル外壁の記録表」 |
国総研の2009年の調査では、波形ラスを留めるステープルのうち、推奨の長さのものは、全国平均で21%でした。現在の割合を示す数字ではありませんが、材料の確認が、施工会社任せになりやすいことを示す例です。
見た目は同じモルタルでも、この見えない部分で、将来の傷み方が変わります。見積書や製品の表示で、外壁用に指定された材料かを、確かめてください。
YYAの考え方: 手入れをしっかりできる人には使う
YYAでは、外壁にモルタルを使うのは、メンテナンスをしっかりできる人です。それ以外の人には、使いません。
ここでいう「しっかりできる」とは、メンテナンスの費用を、計画的に貯められることです。マンションには、管理組合が修繕積立金を集めて大規模修繕を行う仕組みがあります。戸建てには、その仕組みがありません。外壁の補修や塗り替えの費用を、自分で用意しておく必要があります。
継ぎ目の少ない、ひとつながりの面ができるのは、モルタル外壁の魅力です。その一方で、ひび割れが入ること、定期的な点検と、ひび割れの補修、塗り替えが必要になることを受け入れられる人に向く仕上げです。費用は、仕上げ、面積、足場などの条件で変わるため、個別に見積もります。外壁の素材の比べ方は、外壁の色と素材の記事で説明しています。平屋の外壁は、平屋の外壁の記事も参考にしてください。
モルタル以外の吹付や漆喰も含めた、塗り壁の外壁の選び方は、塗り壁の外壁とは?種類の違いと、ひび割れ・汚れ・費用で後悔しない考え方で説明しています。
土間・床のモルタル
土間や床にモルタルを使うと、継ぎ目の少ない、素朴で落ち着いた面ができます。
YYAの土間は、モルタルではなく、コンクリートの表面を金ゴテで仕上げる方法(金属のコテで表面を押さえる仕上げ)を使うことがあります。そのほか、場所と使い方に合わせて、レンガタイルやタイルなど、いろいろな仕上げを選びます。ひび割れを抑えるための目地の位置や間隔などは、面積や使い方に応じて、一般的な方法で検討します。
外壁と同じく、土間でも、モルタルはひび割れが入る前提で選ぶ仕上げです。タイルを選べばひび割れの心配がなくなる、というわけではありません。タイルでも、下地との関係、目地の手入れ、補修の方法、費用が変わります。ひび割れの見え方、手入れ、補修、費用を並べて、モルタルかタイルかを決めてください。土間の計画全体は、土間のある家の記事で説明しています。
DIYについて
モルタルは、ホームセンターでも手に入り、DIYの材料としても知られています。ただし、YYAでは、DIYはおすすめしていません。
とくに外壁は、防水紙・ラス・ステープルを含む構成で成り立ち、材料の確認や施工の管理が必要です。住まいの外壁や土間を、仕上げ材として使う場合は、設計者や施工会社に相談してください。
設計者・施工会社に確認すること
打ち合わせで、次のことを確かめてください。
- どこに使うのか(外壁、土間、床、下地)
- 外壁の場合: 通気構法か/防水紙・ラス・ステープルの種類/コーナーや窓まわりの補強/記録の残し方
- ひび割れが入ること、入ったあとの見方と、補修の考え方
- 点検や塗り替えの手間と、費用の目安
- 土間や床は、滑りやすさ、汚れの落としやすさ、補修の方法、タイルなど他の仕上げとの比較
外壁や土間の仕上げで迷ったら
外壁や土間の仕上げは、見た目だけでなく、手入れの手間、ひび割れ、予算を並べて決めます。YYAでは、敷地や暮らし方、メンテナンスにかけられる手間をうかがいながら、仕上げの候補を整理します。
相談のときは、敷地の住所、好きな仕上げの写真、予算の考え方、手入れにかけられる手間を教えていただくと、話が進めやすくなります。
まとめ
- モルタルは、セメントに砂と水を混ぜたもの。コンクリートは、さらに砂利を混ぜたものです
- 外壁は、モルタル単体ではなく、防水紙・ラス・通気層を含む構成で判断します
- ひび割れは、入ることを前提に考えます。入ったあとの見方と補修まで、設計者・施工会社に確認してください
- 戸建てには、マンションの修繕積立金のような仕組みがありません。補修や塗り替えの費用を計画的に貯められる人に、モルタル外壁は向きます
- 土間は、モルタルのほか、コンクリートの金ゴテ仕上げ、レンガタイル、タイルなどから、手入れや補修まで並べて選びます
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
関連記事
出典
- セメント協会「コンクリートってどんなもの?」https://www.jcassoc.or.jp/tips03.html
- セメント協会「セメントってどんなもの?」https://www.jcassoc.or.jp/tips02.html
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所「モルタル外壁が地震により剥がれたり、下地を劣化させたりしないための7つのQ&A」https://www.nilim.go.jp/lab/hcg/gaiheki/file/mortar-saiyo.pdf
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