キッチンの仕上げは、壁・床・扉を、それぞれ別の見方で選ぶと決めやすくなります。壁は熱と油はね、床は水と油と足ざわり、扉は傷と手あかが、判断のポイントです。
さらに、コンロのある部屋は、法律で壁と天井の仕上げが決まる場合があります。階数が2以上の住宅で、最上階以外の階にあるキッチンは、壁と天井の室内側を準不燃材料以上にします。平屋や、最上階にあるキッチンは、この規定の対象外です。

仕上げを選ぶ前に:部位ごとに求めるものが違う
| 部位 | 主に求めること | 見方 |
|---|---|---|
| 壁(コンロ・シンクのまわり) | 熱、油はね、水はね、拭き取りやすさ、法規 | 汚れが付いたとき、拭き取れるか。コンロの熱に耐えるか |
| 床 | 水、油、滑りにくさ、足ざわり、掃除のしやすさ | 水や油をこぼしたとき、滑らないか。長く立っても疲れにくいか |
| 扉(収納の前面) | 傷、手あか、水はね、見た目、継ぎ目 | 毎日さわる面なので、汚れが目立たないか |
3つとも同じ素材にそろえる方法もあれば、部位ごとに素材を変える方法もあります。LDKの中で、キッチンをどう見せたいかで決めます。
壁:コンロ周りは法律の確認から
内装制限とは
火を使う部屋の壁と天井は、火が広がりにくい材料で仕上げるよう、建築基準法で決まっています。住宅のキッチンは、次の条件にあてはまると対象になります。
| 条件 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 対象になる住宅 | 階数が2以上の住宅(事務所や店舗を兼ねるものを含む)の、最上階以外の階にある、こんろなどの火を使う設備のある部屋。ただし、特定主要構造部を耐火構造とした建築物は対象外 | 建築基準法施行令 第128条の4 第4項 |
| 求められる仕上げ | 壁と天井の室内に面する部分を、準不燃材料でする(または、国土交通大臣が定める方法で、同じ程度にする) | 建築基準法施行令 第128条の5 第6項 |
| 準不燃材料とは | 通常の火災による火熱が加えられたとき、加熱開始後10分間、燃えないなどの要件を満たす材料として、国土交通大臣が定めたもの、または認定を受けたもの | 建築基準法施行令 第1条 第5号 |
たとえば、2階建ての住宅で、1階にキッチンがあるときは、この内装制限の対象になります。平屋のキッチンや、2階建ての2階(最上階)のキッチンは、この規定の対象外です。

対象になる場合は、コンロの周りだけでなく、キッチンの壁と天井の室内に面する部分を、準不燃材料以上の仕上げにします。換気扇の排気口の位置の決まりは、キッチンの寸法の記事で説明しています。
準不燃材料の確かめ方
準不燃材料は、告示(平成12年建設省告示第1401号)で、材料と厚さが決められています。たとえば、厚さ9mm以上のせっこうボードなどが挙げられています。不燃材料も、準不燃材料として扱われます。
製品が準不燃材料にあたるかは、メーカーのカタログや技術資料にある、不燃・準不燃の認定番号で確かめます。木の壁や、紙・布のクロスを使う場合は、準不燃の認定がある製品を選びます。
壁の素材の比べ方
壁の仕上げは、次の4つで比べます。
| 見方 | 確かめること |
|---|---|
| 熱 | コンロのそばで、変形や変色が出ないか |
| 油・水 | 飛んだ油や水を、拭き取れるか |
| 継ぎ目 | 継ぎ目に汚れがたまらないか。継ぎ目が少ない素材か |
| 法規 | 内装制限の対象なら、準不燃以上か |
壁の素材の例には、タイル、キッチン用のパネル、塗装、ガラス、金属板などがあります。YYAの設計では、コンロ周りの壁には、ステンレスを使います。どれを選ぶ場合も、準不燃以上の認定があるかを、製品ごとに確かめます。
床:水と油と、足ざわり
キッチンの床は、水と油をこぼしやすい場所です。また、立つ時間が長いため、足ざわりも大切です。
| 見方 | 確かめること |
|---|---|
| 水 | こぼした水で、しみや変形が出ないか |
| 油・滑り | 油が付いたとき、滑らないか。拭き取りやすいか |
| 足ざわり | 冷たさ、かたさ。長く立っても疲れにくいか |
| 継ぎ目 | 継ぎ目に、水や汚れが入りにくいか |
床には、法律による内装制限はかかりません。内装制限の対象は、壁と天井です。
LDKの床と、キッチンの床は、同じ素材でつなぐ方法と、分ける方法があります。YYAの設計では、LDKと同じ素材でつなぎます。つなぐと、空間が広く見えます。分けると、水や油の汚れが、LDKに広がりにくくなります。
扉:毎日さわる面
扉は、毎日手でさわる面です。次の4つで比べます。
| 見方 | 確かめること |
|---|---|
| 傷 | 鍋や食器があたったとき、傷が目立つか |
| 手あか | 指紋や手あかが、目立たないか |
| 水はね | 水がかかる位置で、角や継ぎ目から水が入らないか |
| 継ぎ目 | 扉と扉のすき間が、見た目や掃除にどう影響するか |
YYAの設計では、扉には、木に塗装した仕上げを選ぶことが多いです。理由は、費用を抑えやすいからです。
扉の面は、壁と同じ色や素材にそろえると、収納が壁の一部のように見えます。反対に、色や素材を変えると、収納の存在が見えやすくなります。
実例:西神中央の家の大きなLDK
YYAが設計した西神中央の家は、築30年の戸建てのリノベーションです。小部屋が多かった間取りを、大きなワンルームのLDKにしました。床には、900×300mmの大きなサイズの十和田石を使っています。キッチンの壁も十和田石で、天板はステンレス、扉は木に塗装した仕上げです。

床・壁・天板・扉に、それぞれ違う素材を使うときは、どの面を主役にして、どの面を静かにするかを先に決めます。素材の数を増やしすぎないことが、まとまりのある空間につながります。
箕面の家のキッチンは、壁も扉も天板も、ステンレスです。写真に写っている正面側は、ガラスです。写っていない面が、ステンレスです。

素材をそろえるか、面ごとに変えるかは、住まいの考え方で選びます。
仕上げの決め方:サンプルで確かめる
仕上げも、カタログの写真だけで決めず、サンプルで確かめます。
- 部位ごとに、優先することを決める(壁は熱と油、床は水と足ざわり、扉は傷と手あか)
- 壁は、キッチンが内装制限の対象かを先に確かめる
- 候補を2〜3種類にしぼり、大きめのサンプルを借りる
- 水・油・コーヒーなどをたらして、拭き取りやすさを確かめる
- 壁・床・扉・天板を並べて、同じ光の下で組み合わせを見る
ご相談の前に
キッチンの仕上げは、住まいの階数や、キッチンの位置で、選べる素材が変わります。ご相談の際は、次の内容を教えてください。
- 住宅の階数と、キッチンのある階
- 平屋か、2階建て以上か(内装制限の確認のため)
- 好みの質感や色(写真があれば)
- 掃除のしやすさと見た目の、どちらを優先したいか
- 今のキッチンの困りごと
まとめ
キッチンの仕上げは、壁・床・扉を別の見方で選びます。壁は熱と油はね、床は水と油と足ざわり、扉は傷と手あかです。階数が2以上の住宅で、最上階以外にあるキッチンは、壁と天井を準不燃材料以上にします。準不燃かどうかは、製品の認定番号で確かめます。サンプルで、水・油・熱の扱いまで確かめてから決めましょう。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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