鴨居(かもい)・長押(なげし)・敷居(しきい)は、どれも和室の建具まわりにある横向きの部材です。
- 敷居:ふすまや障子の下にある、溝の付いた横木。建具はこの溝の上をすべって動きます
- 鴨居:建具の上にある、溝の付いた横木。建具の上端をはさんで支えます
- 長押:鴨居のさらに上に付く、溝のない横材。いまは主に部屋を整えて見せるための化粧材です
つまり、建具を動かすのに必要なのは敷居と鴨居で、長押はなくても建具は動きます。新しく和室をつくるときは、3つを「全部付けるもの」と考えず、部屋の使い方と見え方から決めるのがおすすめです。

3つの違いを比べる
| 敷居(しきい) | 鴨居(かもい) | 長押(なげし) | |
|---|---|---|---|
| 位置 | 建具の下(床) | 建具の上 | 鴨居の上 |
| 溝 | あり | あり | なし |
| 役割 | 建具を下で受け、すべらせる | 建具の上端を支え、倒れないようにする | 部屋の印象を整える化粧材(昔は構造材) |
| なくせるか | 上から吊る戸などにすれば、床の溝はなくせる | 天井まで高さのある建具にすれば、見えなくできる | なくても建具は動く |
| よくある悩み | 段差・つまずき、すり減り・ささくれ | フックや物干しを掛けてよいか | フックや棚を付けてよいか |
鴨居と同じ高さに、溝のない横木だけを付けることもあります。壁の部分に鴨居があるように見せて、部屋全体の高さのラインをそろえるためのもので、「付け鴨居」と呼ばれます。
鴨居:建具を上で支える部材
鴨居は、ふすまや障子の上端を溝で受けて、建具が倒れないように支えています。敷居の上端から鴨居の下端までの高さを「内法(うちのり)」と呼び、建具の高さはこの寸法で決まります。昔の住宅では5尺7寸(約1.73m)前後が多く、いまの住宅では1.8〜2m程度以上にすることが多くなっています。
フックや物干しを掛けるときの注意
鴨居に引っかけるフックやハンガー掛けがよく使われています。掛ける前に、次の点を確かめてください。
- 建具の動きを邪魔しないか:鴨居の溝の近くに掛けると、ふすまや障子が動かなくなったり、建具を傷つけたりします
- 重さ:鴨居は建具を支えるための部材で、重いものを掛けるためのものではありません。濡れた洗濯物やコートを何着も掛けると、鴨居がたわんだり、取り付け部分が傷んだりするおそれがあります
- 湿気:濡れた洗濯物を長く掛けると、木部や壁、畳に湿気がこもり、カビやシミの原因になります
- 賃貸の場合:ビスや釘を打つと原状回復の対象になることがあります。はさむタイプの金具でも、跡が残らないか確かめてから使います
長押:もとは建物を固める部材だった
長押は、柱から柱へ水平に取り付けた横材です。もともとは柱どうしをつないで建物を固める構造材でしたが、柱を貫いて固める「貫(ぬき)」が使われるようになってから、主に装飾の部材になりました(コトバンク:デジタル大辞泉・日本国語大辞典「長押」、JAANUS「nageshi」)。
付ける位置によって名前が変わり、鴨居の上に付くものを「内法長押」、天井の周りに付くものを「天井長押」、柱の下の方に付くものを「地長押」などと呼びます。ふつう「長押」というと、鴨居の上の内法長押のことです。
長押にフックや棚を付けるとき
長押には、額や帽子、ハンガーを掛けるための専用のフックが売られています。いまの長押は化粧材なので、掛けるものは軽いものにとどめます。棚を載せる場合は、長押だけに重さをかけず、壁の中の柱や下地に固定する方法を選んでください。
敷居:段差とすり減りに注意
敷居は、建具を下で受けて、溝の上をすべらせる部材です。床より少し高くなっていることが多く、つまずきの原因になります。
段差をなくすには
住宅性能表示制度の評価方法基準では、高齢者等への配慮の上位の等級で、寝室・トイレ・浴室など日常的に使う空間の床を「段差のない構造」とすることを求めています。ここでいう段差のない構造には、設計寸法で3mm以下、または仕上げ寸法で5mm以下の段差を含みます(国土交通省 資料)。
敷居の段差をなくす方法には、次のようなものがあります。
| 方法 | 内容 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 敷居を床と同じ高さにする | 床の高さをそろえ、溝だけを残す | 床の張り替えが必要になることが多い |
| 床にレールを埋める | 溝の代わりに細いレールを床に埋める | レールの上にほこりがたまりやすい |
| 上から吊る戸にする | 建具を上のレールで吊り、床には何も付けない | 上のレールを支える下地が必要 |
| スロープを置く | 段差の前後に小さな斜面を置く | 置くだけなので手軽だが、つまずかない形と固定を確かめる |
介護が必要な方の住まいでは、介護保険の住宅改修で「段差の解消」や「手すりの取付け」が対象になります。支給限度基準額は20万円で、そのうち原則9割が支給されます(厚生労働省「介護保険における住宅改修」)。工事の前に申請が必要なので、ケアマネジャーや市区町村の窓口に先に相談してください。
すり減り・ささくれ
敷居の溝は、建具が動くたびに少しずつすり減ります。すり減ると建具が重くなったり、がたついたりします。溝に貼る「敷居すべり」というテープを使うと、建具の動きが軽くなり、溝の傷みも抑えられます。ささくれが出ている場合は、けがの原因になるので、早めに補修します。
今の家で和室をつくるときの考え方
鴨居・長押・敷居は、昔ながらの和室の印象をつくる部材です。一方、いまの住まいでは、和室をリビングとつなげて使うことが多くなっています。

- 昔ながらの和室らしさを大切にしたい:鴨居と長押を付けると、横のラインが強調され、落ち着いた和室になります。YYAでは、こってりした和風の部屋では長押を付け、すっきりした現代の和風では付けないことが多くなっています
- リビングとつなげて広く見せたい:天井まで高さのある建具にすると、鴨居が見えず、建具を開けたときに天井がひと続きに見えます。床の敷居もなくせば、和室とリビングの段差もなくなります
- 将来の暮らしやすさを重視したい:敷居の段差をなくし、手すりを付けられる壁の下地を入れておくと、年を重ねても使いやすくなります
部屋の上の方の壁については垂れ壁の記事、和室の様式全体については和風建築の記事で説明しています。
ご相談の前に
和室の新築やリフォームでは、建具の高さ、段差、リビングとのつながり方を一緒に決めることが大切です。ご相談の際は、和室をどう使いたいか(客間・寝室・子どもの遊び場など)、今の和室の写真、段差や建具で困っていることを教えてください。
まとめ
敷居は建具の下、鴨居は建具の上にある溝の付いた横木で、長押は鴨居の上に付く溝のない化粧材です。鴨居や長押に物を掛けるときは、建具の動きと重さに注意しましょう。敷居の段差は、床の高さをそろえる、上から吊る戸にするなどの方法でなくせます。新しく和室をつくるときは、3つを当たり前に付けるのではなく、部屋の使い方と見え方から選ぶのがおすすめです。
この記事の監修
吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。2009年~2021年株式会社日建設計。2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。
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