吹き抜けと勾配天井の違いは?開放感・寒さ・照明・掃除から選ぶ判断基準|建築家が解説

リビングの天井を高くする方法には、大きく吹き抜けと勾配天井の2つがあります。

  • 吹き抜け:上の階の床を一部なくして、1階と2階を縦につなぐ空間
  • 勾配天井:屋根の形に沿って天井を斜めに上げ、1つの階の中で天井を高くするつくり

上の階とのつながりや、高い窓からの光がほしいなら吹き抜け。床面積を減らさずに天井を高くしたい、平屋や最上階の部屋を広く感じさせたいなら勾配天井が向いています。どちらも、断熱と空調の計画、高い場所の照明や窓の手入れを最初から考えておかないと、寒さや掃除で後悔しやすくなります。

吹き抜けのリビング(左)と勾配天井のリビング(右)の比較

吹き抜けと勾配天井の違い

吹き抜け勾配天井
つくり上の階の床をなくして上下をつなぐ屋根の傾きに沿って天井を上げる
つくれる場所2階建て以上の下の階平屋、または2階建ての2階など最上階
床面積吹き抜け部分は上の階の床がないので、床面積に入らない床面積は変わらない
上下のつながり家族の気配や声が上下に伝わる1つの階の中で完結する
光の入り方2階の高さの窓から、1階の奥まで光を届けやすい高い位置の窓や天窓で光を入れられる
気をつけること暖気が上にたまる、音やにおいが伝わる、2階の床が減る屋根の断熱、照明の位置、高い部分の掃除

法令上の扱い

床面積

床面積は「各階の、壁などの中心線で囲まれた部分の水平投影面積」で求めます(建築基準法施行令 第2条第1項第3号)。吹き抜けの部分は上の階に床がないため、上の階の床面積には入りません。そのぶん、同じ延べ床面積でも使える部屋は減ります。

天井の高さ

居室の天井の高さは2.1m以上と決められていて、1つの部屋で天井の高さが違う場合は平均の高さで判断します(建築基準法施行令 第21条)。勾配天井の部屋では、低い側の天井が2.1mを下回っても、部屋全体の平均で2.1m以上あれば基準を満たします。ただし、低い側は頭をぶつけない高さか、家具が置けるかを別に確かめます。

寒さと断熱

吹き抜けや勾配天井で「冬が寒い」と言われるのは、暖かい空気が上にたまり、人がいる床近くが冷えやすいためです。

  • 断熱の位置:勾配天井は、天井の上ではなく屋根面で断熱します。吹き抜けに面した高い窓も、断熱性能の高いサッシとガラスを選びます
  • 空調の計画:エアコンの位置と台数、床暖房、天井のファン(シーリングファン)で上にたまった暖気を下に戻す方法を、最初から計画に入れます
  • 建物全体の断熱性能:大きな空間の快適さは、家全体の断熱と気密の性能に左右されます

夏は逆に、高い窓から入る日差しで上部に熱がたまります。窓の向き、庇、開けて熱を逃がせる窓を組み合わせます。

音とにおい

吹き抜けは上下の階がつながるため、リビングのテレビの音や料理のにおいが2階の部屋まで届きやすくなります。2階の寝室や子ども部屋を、吹き抜けに直接面しない位置にする、扉で区切れるようにする、といった間取りの工夫が必要です。勾配天井は1つの階の中で完結するので、この点では影響が小さくなります。

照明と掃除・メンテナンス

高い天井で後悔が多いのが、照明の交換と高い窓の掃除です。

  • 照明は、手の届く高さの壁付けの器具や、梁や棚に仕込む間接照明を中心にすると、交換が楽になります
  • 高い位置に器具を付ける場合は、昇降装置付きの器具や、2階の廊下・手すり側から手が届く配置を検討します
  • 高い窓の掃除やカーテンの開け閉めは、手が届く位置か、電動にするか、そもそも開け閉めしない窓にするかを決めておきます

シーリングファンや照明の電源も、あとから追加しにくいので、設計の段階で位置を決めます。

どちらが向くか

こんなとき向いているもの
家族の気配を上下で感じたい。2階のホールやスタディスペースとつなげたい吹き抜け
1階の奥まで光を届けたいが、周りに建物が迫っている吹き抜け(高い窓と組み合わせる)
床面積を減らしたくない勾配天井
平屋や、2階リビングの家で天井を高くしたい勾配天井
冷暖房の効率や音を優先したい天井の一部だけを高くする、または勾配天井

吹き抜けの代わりに、階段まわりを大きく開いて上下をつなぐ方法もあります。YYAが設計した箕面の家では、吹き抜けではなく、大きな階段室で1階と2階をつないでいます。

箕面の家の階段室

費用について

吹き抜けや勾配天井の費用は、構造(梁の架け方)、断熱の仕様、窓や照明・空調の計画で変わります。天井を高くすること自体よりも、それに伴う窓、断熱、空調、足場の費用が大きくなることがあります。図面ができた段階で、項目ごとに確かめましょう。

ご相談の前に

吹き抜けや勾配天井は、断熱・空調・窓・照明と一緒に決める計画です。ご相談の際は、敷地の住所、平屋か2階建てか、リビングを1階と2階のどちらに置きたいか、気になっていること(寒さ、音、掃除など)を教えてください。

まとめ

吹き抜けは上下の階をつなぎ、勾配天井は1つの階の中で天井を高くするつくりです。吹き抜けの部分は床面積に入らず、勾配天井の部屋の天井高は平均で判断します。どちらも、断熱と空調、照明の交換や窓の手入れを最初から計画すれば、開放感を楽しめる空間になります。

この記事の監修

吉野優輔(一級建築士/株式会社YYA 代表取締役)
2007年近畿大学理工学部建築学科卒業。片岡重男建築研究所、株式会社日建設計を経て、2021年に独立(2022年に株式会社YYAに改組)。2024年から近畿大学建築学部の非常勤講師。詳しくは会社概要をご覧ください。

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