滝の中で過ごす新しい空間体験のできる休憩所

積層された滝の空間

水簾洞(OSAKA EXPO2025 休憩所プロポーザル案)

所在地:大阪府大阪市此花区夢洲

用途:休憩所

施主:大阪市

竣工:unbuilt

延床面積:830㎡

2025年に開催される大阪万博の休憩所のプロポーザルの提案である。我々が提案したものは、万博という国際色豊かなハレの場である舞台において、祝祭性のあるイベントに建つ建築にふさわしい、思わず中に入ってみたくなるような、これまでにないような形態、空間性を持つ休憩所を提案した。外装はすべて水で、屋根、梁は工事現場にあるような敷き鉄板ででき、柱、基礎は鉄骨でどこにでもある素材を使いながらも全く違う世界を作り上ることを目標とした。構造は国内外で活動する構造家の金田泰裕氏と協働とし、実現可能なディテールを含めた提案を行った。

 

 

滝が集まり、広がる「水簾洞」

ウォーターワールドに隣接する特異な敷地特性をもとに、それに関連付けて、滝が集まり、滝が周囲に広がっていくような動きのある積層された休憩所を提案した。

 

大阪万博でしか実現できない建築をつくる

万博会期は2025年4月から10月といった季節のよい中間期にスタートし、真夏を経て、中間期に閉幕するといった特徴から、普段では実現することの難しい外装を持たないオープンな休憩所を提案。循環水を9割、残り1割を上水で運用する「滝のカーテン」で構成された休憩所は気化熱を利用した自然な涼しさで過ごす空間となる。基本的に循環水を再利用し続ける計画とすることで、ランニングコストを抑えた現実的な提案としている。

 

日本の原風景である棚田を連想させる形態

世界から数多くのゲストが来場される万博において、ある意味で、日本らしさを伝えることも非常に意味があると考え、日本の原風景である棚田を連想させるようなユニークな休憩所とすることで、美しい日本の原風景を思い起させることができる計画とした。

 

積層された形態の「多様でありながら、ひとつ」の大らかな空間

建物の上部から自然越流した滝は建物内のあらゆる部分に流れる。静かに滝が流れる場所、滝が集まってきて滝壺のようなダイナミックな風景をつくる場所、天井から水面が揺れる様子がわかる場所、滝に囲われた場所など、様々な風景を計画することで、万博という賑やかな世界から一旦リセットされるような居心地のよい休憩所を作り、来訪者が好きな場所で、好きな時間を過ごしてもらえるような「多様でありながら、ひとつ」の大らかな空間で、各人が過ごす場を作った。

 

1/fゆらぎ効果でリラックスできる環境づくり

自然界に存在するものにはゆらぎがあり、規則性と突発性、予測性と逸脱性が適度に組み合わさった1/fゆらぎは居心地のよさを与え、人の心を落ち着かせると言われている。滝の水の流れをコントロールし、様々な流れを意図的に作ることにより、滝の流れる音に違いを持たせ、1/fゆらぎを発生させる。その空間に囲まれた人々にとって、居心地のよい空間となるように計画。

 

水が合理的に流れていく形状

流体シュミレーションを行った結果、水を効率的に、下へ自然越流するには正円であることがわかった。また最上部において、屋根の大きさは小さい径であるほど、水ポンプの圧送負荷を減らすことができることから、最上部の屋根を最も小さい径とし、順に大きくするような建物形状をする合理的な計画とすることで、水を無理なく、循環させる形態を導いた。

 

3Rに関する提案

屋根の材料に敷き鉄板を使用し、会期終了後には切断し、別の工事現場でリユースする。

根入れで発生した掘削した土をリサイクルし、土舗装として休憩所の床仕上げとして使うとともに、ベンチのベースも同様にリサイクルした土壁仕上げとしている。

地中梁は山留材として使われるサイズを基準に、縦に積んだ形状として、使うことで、会期終了後に山留材としてリユースしやすいように配慮。

敷き鉄板などリユースできるものに素材を厳選することで、工種を減らし、コスト及び、リデュースに配慮した計画。

エントランス
積層された滝の空間
滝の休憩所
広がる空と休憩所
溶け込む夕景
site plan
plan
section
structure